薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2024年7月1日 児島 悠史

「トリプルワーミー」って何?~患者を守るために知っておくべき薬の組み合わせとリスク・傾向

「トリプルワーミー」って何?~患者を守るために知っておくべき薬の組み合わせとリスク・傾向の画像1
☞この記事でわかること
  • 「トリプルワーミー」は、どんな薬の組み合わせか
  • 「トリプルワーミー」は、なぜ発生しやすいのか
  • 「トリプルワーミー」は、なぜ急性腎障害を起こすのか

「高血圧」で循環器内科、「腰痛」で整形外科に通っている…そんな患者さんはたくさんおられると思います。お薬手帳を確認して、“併用禁忌の薬”がなければ「問題ナシ」と判断してそのまま調剤し、いつも通りに服薬指導をすることも多いと思いますが、果たしてそれで本当に大丈夫だったでしょうか。

実は、この対応では意外と大きなリスクを見逃してしまっている可能性があります。それが、「トリプルワーミー」と呼ばれる薬の組み合わせで起こる、急性腎障害のリスクです。

「トリプルワーミー」って何?~3つの薬の組み合わせと急性腎障害のリスク

「トリプルワーミー(Triple Whammy)」とは、①「アンジオテンシン受容体拮抗薬(ARB)/アンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)」+「②利尿薬」+「③NSAIDs」という3つの薬の併用を指します。

これら3つの薬は、それぞれ異なる作用によって腎血流量を低下させるため、併用した場合は腎虚血がより起こりやすくなり、これが引き金となって急性腎障害を起こすことがあります1)

もちろん、1つの薬だけでも急性腎障害を起こすリスクはありますが、1剤より2剤、2剤より3剤を併用したときの方が、腎血流量を“多方面から低下させる”ためリスクは高くなると考えられています2,3)

こうした背景から、「ARB/ACE阻害薬」+「利尿薬」+「NSAIDs」の併用を「三段攻撃」になぞらえた「トリプルワーミー(Triple Whammy)」と呼びます。

【かかりつけ薬剤師必見!】「トリプルワーミー」から患者を守るの画像2

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①ARB/ACE阻害薬:腎臓の輸出細動脈の収縮を抑制することで、腎血流量を低下させる
②利尿薬:循環血流量を減少させることで、腎血流量を低下させる
③NSAIDs:腎臓の輸入細動脈を収縮させることで、腎血流量を低下させる

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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