「防風通聖散」のリスクを知ろう~漢方薬の意外と知らない副作用と初期症状〜
- 「防風通聖散」には実は注意すべき生薬が多い。安易に使うことはリスクを伴う
- 「防風通聖散」の代表的な副作用は、吐き気や嘔吐、下痢、皮膚のかゆみなど
- 副作用の報告が多い生薬は、麻黄、甘草、大黄、山梔子など
- 「防風通聖散」は体力のない人は服用に向かない
- 漢方の副作用は、患者へ配慮した伝え方を
安心安全というイメージの強い「漢方薬」。しかし、そのリスクは意外に見落としがちです。漢方薬のもつ副作用は構成生薬に由来することが多々あります。
今回は、ダイエット薬として一般にも広く使われるようになった「防風通聖散」を例に、まずはこの漢方薬を安易に使うことのリスクについて、原因となる構成生薬の視点からお伝えします。
さらに、その他注意すべき生薬について解説します。生薬の知識を深めることで、漢方薬のリスクの理解や、患者さんへのわかりやすい指導につながります。ただし、伝え方にはちょっとしたコツが必要ですよ!
「防風通聖散」の構成と効能について
漢方薬は、古くから天然由来の生薬から作られた安心で安全な治療薬として認識されてきましたが、近年、これまで知られていなかった副作用の報告が目立つようになりました。
その理由として、漢方製剤の保険収載に伴い専門医以外の処方機会が増えたことや、健康志向の高まりからOTC医薬品としても広く市場に出回るようになったことなどがあげられます。
漢方薬を扱う薬剤師は、漢方薬のもつ効能効果と同等に、リスクを認識しておく必要があります。
まずは、防風通聖散の構成と効能をみてみましょう。「防風通聖散」は、次の18種類の生薬から構成されています。
防風/黄苓/大黄/芒硝/麻黄/石膏/白朮/荊芥(ケイガイ)/連翹(レンギョウ)/桔梗(キキョウ)/山梔子/芍薬/当帰/川芎/薄荷(ハッカ)/滑石(カッセキ)/生姜(ショウキョウ)/甘草
「防風通聖散」は、体内にこもった熱を冷まし(黄苓/山梔子/石膏/薄荷)、発散させ(防風/荊芥/生姜/麻黄)、血液循環(川芎/芍薬/当帰)をよくします。
さらに、体表の余分な水分を除き(白朮/滑石)、毒素を除き(桔梗/連翹)、余分なものを排泄する(大黄/芒硝)といった作用を全体的に緩和(甘草)することで効果を発揮します。
つまり、新陳代謝が悪くなり、からだの中に毒となって滞積したものの排除や、毒を溜めやすい体質の改善を目標にしています。
「防風通聖散」は安易に服用できない
肥満症やメタボリックシンドロームの改善目的としてよく使われるようになった「防風通聖散」。名称を変えてOTC薬(ビスラットゴールドEXα、ナイシトール、コッコアポ、ココスリムなど)としても販売されています。
ドラッグストア等の店頭ではもちろん、インターネット等で自宅にいても簡単に手に入れることができるようになりました。
「防風通聖散」は、使用に注意すべき生薬が多く配合されています。調剤薬局での投薬時やOTC購入希望者への説明だけでなく、すでに服用されている患者さんについてもきちんと把握しておかなければなりません。
添付文書には以下のように記載されています。
<ツムラ>(添付文書より抜粋)
腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症: 高血圧の随伴症状(どうき、肩こり、のぼせ)、肥満症、むくみ、 便秘
それでは、この漢方薬から考えなければいけないリスクについて、詳しく解説していきます。