妊娠中のβ遮断薬の禁忌解除で高血圧・不整脈・心不全治療はどう変わる?
- 高血圧治療に関して、妊娠中でも使える主要降圧薬が増える
- 不整脈治療はガイドラインでも推奨される薬が選択肢に
- 心不全治療においては、エビデンス・保険適用の面で優れた薬の選択肢が追加
前編では、β遮断薬の「ビソプロロール」と「カルベジロール」の妊娠中の安全性や注意すべきリスクについて解説しましたが、後編では今回の添付文書改訂(禁忌制限の削除)によって、具体的にどんな風に薬物治療が変わるのか、を簡単に見ていきたいと思います。
以前から禁忌でなかったβ遮断薬は?
以前より、β遮断薬の中でも「アテノロール」や「ラベタロール」、「プロプラノロール」、「ソタロール」に関しては添付文書上も妊婦に対する禁忌の指定はありません。そのため、これまでも全てのβ遮断薬が妊娠中に使えなかった、というわけではありません。
しかし、同じβ遮断薬であっても、薬によって受容体の選択性や内因性交感神経刺激性などが異なり、それぞれに適した疾患や病態があります。今回の改訂で禁忌が解除された「ビソプロロール」と「カルベジロール」は、β遮断薬としてもエビデンスが豊富で頻用される薬のため、高血圧や不整脈・心不全などの領域において、より適した薬での治療を行えるケースが増える、と考えられます。
高血圧治療はどう変わる?~妊娠中でも使える「主要降圧薬」が増える
高血圧治療では、ARB・ACE阻害薬・Ca拮抗薬・サイアザイド系利尿薬・β遮断薬の5種が「主要降圧薬」として頻用されます1)。
しかし、たとえばARBやACE阻害薬は、胎児の死亡や低血圧、腎不全、高カリウム血症のほか、羊水減少に伴う四肢の拘縮、脳や頭蓋、肺の形成不全など様々なリスク2,3,4)が確認されており、妊娠中あるいは妊娠の可能性がある女性の場合は薬の中止や変更を行う必要があるなど、妊娠中にも使える降圧薬はそれほど多くありません。