【溶連菌に対応】抗菌薬不足のときの代替&推奨薬剤の選び方
- 溶連菌感染症で推奨される抗菌治療薬の知識をおさらい
- 推奨される溶連菌治療薬がないときの代替薬
- 溶連菌治療薬の代替薬を選ぶときの服薬指導時の注意事項
溶連菌とは、β溶血する連鎖球菌の総称です。中でもA群溶血性レンサ球菌(GAS)は強い毒素を産生し、急性扁桃炎・咽頭炎、丹毒、蜂窩織炎、壊死性軟部組織感染症などさまざまな感染症の起炎菌です。小児の咽頭炎でよく見られることが知られており、抗菌薬治療の適応となります。今回は、溶連菌感染症による急性咽頭炎の抗菌薬の選択について、推奨薬剤や代替薬を整理して紹介します。
A群溶血性レンサ球菌(GAS)治療の第一選択は、ペニシリン系
急性扁桃炎・咽頭炎診療においては、「細菌感染とウイルス感染を鑑別し、抗菌薬治療の対象は細菌性炎症、とりわけ A群溶血性レンサ球菌(Group A Streptococcus pyogenes/GAS)とする」とされており、扁桃周囲膿瘍などの化膿性合併症のリスク低減やリウマチ熱の予防などを目的に抗菌薬治療が行われます。
GAS はペニシリン系薬、セファロスポリン系薬等の β-ラクタム系薬に良好な感受性を維持しており、第一選択として用いられる薬剤はペニシリン系薬であるアモキシシリン製剤です。
これは成人、小児ともに同様で、アモキシシリンの10日間投与が基本とされています(6日投与も可能)。また、軽度のペニシリンアレルギーがある場合などはセファレキシン製剤が推奨されており、こちらも 10 日間投与が基本となっています。
なお、重度のペニシリンアレルギーがある場合は、マクロライド系薬やリンコマイシン系薬が選択肢となります。しかしながら、A群溶血性レンサ球菌(GAS)に推奨されている抗菌薬のほぼ全てが限定出荷となっている状況です。
具体的には、サワシリンカプセル、ワイドシリン細粒、ケフレックス、ケフレックスシロップ用細粒などが限定出荷となっています(2024年7月現在)。
抗菌薬不足の背景を知ろう
抗菌薬不足はなぜ起こっているのでしょうか? 厚生労働省の通知によると新型コロナウ イルス感染症の流行が背景にあるようです。以下、通知から抜粋します。
- 新型コロナウイルス感染症以降、抗菌薬を必要とする感染症が減った
- それに伴い抗菌薬使用量が減少し、供給量も縮小
- 今般、新型コロナウイルス感染症影響下では流行が発生していなかった感染症が拡大
- 経口抗菌薬の需要が増加し、製造販売業者(いわゆる製薬会社)からの出荷が追いつかない
それに加え、製造販売業者の都合により供給不足が起こる事例として、下記のようなさまざまなトラブルがあるようです。
- 自社製品の需要の高まりによる出荷量増加への対応困難
- 原薬製造所との交渉が進まず、原薬調達できなくなる
- 一部素材の調達が遅れ、製造遅延が発生。将来的には限定出荷・出荷停止せざるを得ない
- 原薬の試験不適合により、製造ができなくなった
- 受託製造所の製造キャパシティの問題により来年には製造しないと通告された
- 製品不良によるメーカー判断での出荷停止
- 自主回収・行政処分が予想される
このように複数の要因で現在の抗菌薬不足が起こっており、その解消に具体的な目処が立っていないというのが現状です。