【薬剤師も要チェック】「帯状疱疹のワクチン」、どっちを選ぶ?①~生ワクチンと不活化ワクチンの効果の比較
- 帯状疱疹は、リスク回避・ダメージコントロールが難しいため、ワクチンによる予防が重要
- 帯状疱疹のワクチンには、従来から使われている「生ワクチン」と、新しく登場した「不活化ワクチン」がある
- 帯状疱疹の発症予防、帯状疱疹後神経痛の抑制効果は、「不活化ワクチン」の方が明確に優れる
帯状疱疹のワクチンと言えば、これまでは「生ワクチン(乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」)」だけでしたが、2018年に「不活化ワクチン(シングリックス)」が登場したことで選択肢が広がり、現在はこの2種類のどちらかを使うことになっています。
どちらのワクチンにも効果はありますが、期待できる効果の大きさや、副反応の出やすさ、接種にかかる費用がかなり異なるため、患者さんから相談を受けた際にはその患者さんの年齢や持病、経済状況などを色々と考慮する必要があります。
前編の今回は患者さんからの質問・相談に備えるために、そもそもなぜ帯状疱疹にはワクチン接種が重要なのかという背景、さらに2種のワクチンの“効果”の違いを解説します。
押さえておきたいポイント①:なぜワクチン接種が推奨されるのか?
帯状疱疹は、水痘・帯状疱疹ウイルスが原因で皮膚に痒みや痛みが現れる疾患です。このウイルスには、基本的に幼少期のころに既に感染しており、その時は「水ぼうそう」として発症しています。この時に感染したウイルスは、「水ぼうそう」が治った後も神経に長く残り続けますが、加齢やストレス・疲れなどによって身体の抵抗力が弱ったときにこのウイルスが活性化して発症するのが「帯状疱疹」です。
加齢やストレス・疲れといったリスク要因は人生から排除することは困難なため、できる予防策としては“疲れやストレスを溜めない”程度のものしかありません。そのため、80歳までの間に3人に1人が発症する1)くらい、多くの人が経験する疾患になっています。
さらに帯状疱疹は、発症すると強い痛みによって日常生活に支障を来たすほか、その痛みが年単位で続くこともある2)など、非常に厄介です。なお、帯状疱疹には効果的な治療薬がありますが、高齢者が使う場合、抗ウイルス薬(例:バラシクロビル)では急性腎障害3)やアシクロビル脳症4)、神経痛治療薬(例:プレガバリン)では眠気・ふらつき・転倒5)と、薬が新たなトラブルに繋がることも多く、“気軽に治療できる”というわけでもありません。
以上のようにリスク回避・ダメージコントロールの両方が難しいという事情から、帯状疱疹はワクチン接種によって予防する、ということが非常に重要になります。