薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2024年9月11日 児島 悠史

【虫刺されの服薬指導①】“弱め”の「ステロイド外用薬」が処方されたとき

【虫刺されの服薬指導①】“弱め”の「ステロイド外用薬」が処方されたときのメイン画像
☞この記事でわかること
  • 虫刺されでも、ステロイド外用薬は強さ(ランク)に応じて使い分ける
  • V群(weak)のステロイド外用薬でも虫刺されには十分に効果的で、むしろ部位を問わず使えて便利
  • V群(weak)のステロイド外用薬で“効かなかった”ときは、ただの虫刺され以外の可能性も疑う

ヒトを刺す、噛むなどする虫は、蚊をはじめ、ハチ、ムカデ、毛虫、ダニ、ノミなど様々なものがいますが、基本的に虫刺されで起こる皮膚の腫れ・痛み・痒みはアレルギー反応によるもののため、炎症を抑える「ステロイド外用薬」がその症状解消に効果的です。そのため、虫刺されに「ステロイド外用薬」を使うのは、薬学的にも合理的な判断と言えます。

「ステロイド外用薬」には、使う場所や症状に応じて適切な強さ(ランク)の薬を選ぶことが重要ですが、虫刺されでは処方される薬が処方医によって強かったり弱かったりすることがあります。その背景と意図を踏まえた、服薬指導のポイントを解説します。

考え方の基本:虫刺されでも、「ステロイド外用薬」は“塗布する部位”に適したランクのものを選ぶ

「ステロイド外用薬」は、その作用の強さから5つの強さ(ランク)に分類されています(表1)。

虫刺されにおいても、“刺された場所”と“症状の強さ”に応じて適した強さ(ランク)の薬を選ぶのが基本です。ただし、アトピー性皮膚炎などの治療に比べると、思っているよりも“強め”、あるいは逆に“弱め”な薬が処方されることも多いため、虫刺され特有の事情を押さえておく必要があります。

表1:ステロイド外用薬のランク分け

ランク 一般名 先発医薬品
Ⅰ群
(Strongest)
クロベタゾールプロピオン酸エステル
ジフロラゾン酢酸エステル
デルモベート
ジフラール
Ⅱ群
(Very Strong)
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル
モメタゾンフランカルボン酸エステル
フルオシノニド
ベタメタゾンジプロピオン酸エステル
酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン
ジフルコルトロン吉草酸エステル
アンテベート
フルメタ
トプシム
リンデロンDP
パンデル
ネリゾナ
Ⅲ群
(Strong)
デキサメタゾンプロピオン酸エステル
ベタメタゾン吉草酸エステル
デキサメタゾン吉草酸エステル
ベクロメタゾンプロピオン酸エステル
フルオシノロンアセトニド
メサデルム
リンデロンV
ボアラ
プロパデルム
フルコート
Ⅳ群
(Medium)
ヒドロコルチゾン酪酸エステル
プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル
アルクロメタゾンプロピオン酸エステル
クロベタゾン酪酸エステル
トリアムシノロンアセトニド
ロコイド
リドメックス
アルメタ
キンダベート
レダコート
Ⅴ群
(Weak)
プレドニゾロン
ヒドロコルチゾン酢酸エステル
デキサメタゾン酢酸エステル
プレドニゾロン酢酸エステル

“弱め”なステロイド外用薬が処方されている場合~V群でも効果的だと重点的に説明を

V群(weak)の「ステロイド外用薬」は、アトピー性皮膚炎などの治療ではほとんど使うことがなくあまり馴染みのない薬かもしれません。

しかし、一般的な虫刺されの症状であれば、このV群(weak)の薬でも十分に効果があることが確認されています1)。実際、虫刺されのOTC医薬品では、V群(weak)でも「ステロイド外用薬」が配合されているものは、「抗ヒスタミン薬」や「鎮痒薬」だけの薬よりも“強力な薬”として扱われています。

ステロイド(Ⅴ群) OTC医薬品の例
ヒドロコルチゾン酢酸エステル オイラックスA
デキサメタゾン酢酸エステル ウナコーワクールα、液体ムヒS2α、ムヒアルファSⅡ、オイラックスDX軟膏
プレドニゾロン酢酸エステル アレルギールクリーム、アレルギールジェル

特に、V群(weak)の「ステロイド外用薬」を虫刺されに使う最大のメリットは、顔も含めた身体のどの部位を刺されても使える、という点です。

すべてのコラムを読むにはm3.com に会員登録(無料)が必要です

こちらもおすすめ

児島 悠史の画像

児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

キーワード一覧

薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

この記事の関連記事

この記事に関連するクイズ

アクセス数ランキング

新着一覧

26万人以上の薬剤師が登録する日本最大級の医療従事者専用サイト。会員登録は【無料】です。

薬剤師がm3.comに登録するメリットの画像

m3.com会員としてログインする

m3.comすべてのサービス・機能をご利用いただくには、m3.com会員登録が必要です。

注目のキーワード

禁忌 医薬品情報・DI 調剤 調剤報酬改定 薬物療法・作用機序 服薬指導 派遣薬剤師 薬局経営 年収・待遇 プロブレム