【虫刺されの服薬指導①】“弱め”の「ステロイド外用薬」が処方されたとき
- 虫刺されでも、ステロイド外用薬は強さ(ランク)に応じて使い分ける
- V群(weak)のステロイド外用薬でも虫刺されには十分に効果的で、むしろ部位を問わず使えて便利
- V群(weak)のステロイド外用薬で“効かなかった”ときは、ただの虫刺され以外の可能性も疑う
ヒトを刺す、噛むなどする虫は、蚊をはじめ、ハチ、ムカデ、毛虫、ダニ、ノミなど様々なものがいますが、基本的に虫刺されで起こる皮膚の腫れ・痛み・痒みはアレルギー反応によるもののため、炎症を抑える「ステロイド外用薬」がその症状解消に効果的です。そのため、虫刺されに「ステロイド外用薬」を使うのは、薬学的にも合理的な判断と言えます。
「ステロイド外用薬」には、使う場所や症状に応じて適切な強さ(ランク)の薬を選ぶことが重要ですが、虫刺されでは処方される薬が処方医によって強かったり弱かったりすることがあります。その背景と意図を踏まえた、服薬指導のポイントを解説します。
考え方の基本:虫刺されでも、「ステロイド外用薬」は“塗布する部位”に適したランクのものを選ぶ
「ステロイド外用薬」は、その作用の強さから5つの強さ(ランク)に分類されています(表1)。
虫刺されにおいても、“刺された場所”と“症状の強さ”に応じて適した強さ(ランク)の薬を選ぶのが基本です。ただし、アトピー性皮膚炎などの治療に比べると、思っているよりも“強め”、あるいは逆に“弱め”な薬が処方されることも多いため、虫刺され特有の事情を押さえておく必要があります。
表1:ステロイド外用薬のランク分け
ランク | 一般名 | 先発医薬品 |
Ⅰ群 (Strongest) |
クロベタゾールプロピオン酸エステル ジフロラゾン酢酸エステル |
デルモベート ジフラール |
Ⅱ群 (Very Strong) |
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル モメタゾンフランカルボン酸エステル フルオシノニド ベタメタゾンジプロピオン酸エステル 酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン ジフルコルトロン吉草酸エステル |
アンテベート フルメタ トプシム リンデロンDP パンデル ネリゾナ |
Ⅲ群 (Strong) |
デキサメタゾンプロピオン酸エステル ベタメタゾン吉草酸エステル デキサメタゾン吉草酸エステル ベクロメタゾンプロピオン酸エステル フルオシノロンアセトニド |
メサデルム リンデロンV ボアラ プロパデルム フルコート |
Ⅳ群 (Medium) |
ヒドロコルチゾン酪酸エステル プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル アルクロメタゾンプロピオン酸エステル クロベタゾン酪酸エステル トリアムシノロンアセトニド |
ロコイド リドメックス アルメタ キンダベート レダコート |
Ⅴ群 (Weak) |
プレドニゾロン ヒドロコルチゾン酢酸エステル デキサメタゾン酢酸エステル プレドニゾロン酢酸エステル |
“弱め”なステロイド外用薬が処方されている場合~V群でも効果的だと重点的に説明を
V群(weak)の「ステロイド外用薬」は、アトピー性皮膚炎などの治療ではほとんど使うことがなくあまり馴染みのない薬かもしれません。
しかし、一般的な虫刺されの症状であれば、このV群(weak)の薬でも十分に効果があることが確認されています1)。実際、虫刺されのOTC医薬品では、V群(weak)でも「ステロイド外用薬」が配合されているものは、「抗ヒスタミン薬」や「鎮痒薬」だけの薬よりも“強力な薬”として扱われています。
ステロイド(Ⅴ群) | OTC医薬品の例 |
ヒドロコルチゾン酢酸エステル | オイラックスA |
デキサメタゾン酢酸エステル | ウナコーワクールα、液体ムヒS2α、ムヒアルファSⅡ、オイラックスDX軟膏 |
プレドニゾロン酢酸エステル | アレルギールクリーム、アレルギールジェル |
特に、V群(weak)の「ステロイド外用薬」を虫刺されに使う最大のメリットは、顔も含めた身体のどの部位を刺されても使える、という点です。