薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2024年9月13日 児島 悠史

【虫刺されの服薬指導②】 “強め”の「ステロイド外用薬」が処方されたとき

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☞この記事でわかること
  • Ⅰ群(Strongest)やⅡ群(Very Strong)のステロイド外用薬で注意すべき副作用
  • “虫刺され”に使う量・期間であれば、副腎機能抑制や皮膚委縮のリスクは低そう
  • 強力な薬を目の周りに塗布する、薬のついた指で目をこする、といったことをしないように注意喚起が必要

前編では、虫刺されに対して“弱め”なランクの「ステロイド外用薬」が処方された際の服薬指導のポイントを解説しましたが、虫刺されには逆に“強め”なランクの薬が使われることもあります。

特に、「蚊」のように軽い症状で済む虫刺されではなく、ハチやムカデ、毛虫、ノミ、ダニのような虫に刺されたときの腫れ・痛み・痒みは強く現れることも多いため、アトピー性皮膚炎の治療などに比べると、思っているよりも強めな「ステロイド外用薬」が処方されることもよくあります。

後編では、こうした“強め”の「ステロイド外用薬」が処方された際の服薬指導のポイントを解説します。

“強め”なステロイド外用薬が処方されている場合~副腎機能抑制と皮膚委縮の不安解消を

虫刺されによる腫れ・痛み・痒みの症状が強い場合は、Ⅰ群(Strongest)やⅡ群(Very Strong)に分類される“強め”の「ステロイド外用薬」が使われることがありますが、その使い方や塗布部位に関して、アトピー性皮膚炎の治療などに比べると、やや攻め気味に感じることがあるかもしれません。

ランク 一般名 先発医薬品
Ⅰ群
(Strongest)
クロベタゾールプロピオン酸エステル
ジフロラゾン酢酸エステル
デルモベート
ジフラール
Ⅱ群
(Very Strong)
ベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル
モメタゾンフランカルボン酸エステル
フルオシノニド
ベタメタゾンジプロピオン酸エステル
酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン
ジフルコルトロン吉草酸エステル
アンテベート
フルメタ
トプシム
リンデロンDP
パンデル
ネリゾナ
Ⅲ群
(Strong)
デキサメタゾンプロピオン酸エステル
ベタメタゾン吉草酸エステル
デキサメタゾン吉草酸エステル
ベクロメタゾンプロピオン酸エステル
フルオシノロンアセトニド
メサデルム
リンデロンV
ボアラ
プロパデルム
フルコート
Ⅳ群
(Medium)
ヒドロコルチゾン酪酸エステル
プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル
アルクロメタゾンプロピオン酸エステル
クロベタゾン酪酸エステル
トリアムシノロンアセトニド
ロコイド
リドメックス
アルメタ
キンダベート
レダコート
Ⅴ群
(Weak)
プレドニゾロン
ヒドロコルチゾン酢酸エステル
デキサメタゾン酢酸エステル
プレドニゾロン酢酸エステル

※表1:ステロイド外用薬のランク分け

確かに、Ⅰ群(Strongest)やⅡ群(Very Strong)に分類される「ステロイド外用薬」は副作用にも注意しながら慎重に使う必要のある薬です。しかし、基本的に虫刺されであれば薬を使う部位も限定的で、また使う期間も長期に渡るわけではありません。

そのため、“強め”の「ステロイド外用薬」で症状を一気に鎮めてしまう、といった方針で治療が行われることもよくあります。ただし、このとき意識したいのが、副腎機能抑制などの全身性の副作用と、皮膚委縮などの局所の副作用に対する不安感の解消です。

不安を解消したい副作用① 副腎機能抑制

ステロイドの副作用で注意しなければならないものの1つが、副腎機能抑制です。

ヒトの体内では、恒常的にステロイドのホルモンが副腎皮質から分泌(プレドニゾロン換算で2.5~5mg/日)されていますが、これを上回る量のステロイドを摂取すると、この分泌が行われなくなっていきます。ステロイドの服薬を急に中止すると離脱症状が起こるのは、これが主な原因です。

「ステロイド外用薬」でも、あまり大量かつ長期に使っているとこの副腎機能抑制を起こすことがあるため注意が必要ですが、通常、虫刺されに対する使用で副腎機能抑制のリスクが顕在化することは滅多にありません。

ステロイド外用薬のランク 小児 成人
Ⅰ群(Strongest) 5g 10g
Ⅱ群(Very Strong) 10g 20g
Ⅲ群(Strong)以下 15g 40g

※ステロイド外用薬による「副腎機能抑制」が起こるとされる1日の目安量 1,2)

そのため、この副作用を怖がって「ステロイド外用薬」を使わず、強い皮膚症状が長引いてしまう、といった事態を避けられるような服薬指導を行うことが大切です。

不安を解消したい副作用② 皮膚委縮

Ⅰ群(Strongest)やⅡ群(Very Strong)の「ステロイド外用薬」では、皮膚が薄くなっていく皮膚委縮の副作用に注意する必要があります。

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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