薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2024年10月14日 児島 悠史

片頭痛治療に対するNSAIDsとトリプタンの長所・短所、使いどころ

片頭痛治療に対するNSAIDsとトリプタンの長所・短所、使いどころのメイン画像
☞この記事のポイント
  • 片頭痛か緊張型頭痛かを見分けるのが最重要ポイント
  • 一般的な解熱鎮痛薬は、重い片頭痛治療には不向きな傾向
  • 「トリプタン」は、片頭痛が起きていない段階で“予防的”に使うには不向き
  • NSAIDsとトリプタンが併用できない…というのは誤解

片頭痛の治療には、アセトアミノフェンやNSAIDsといった一般的な解熱鎮痛薬、トリプタン、セロトニン5-HT1F受容体作動薬(ラスミジタン)、CGRP関連薬、エルゴタミン製剤と色々な薬が用いられます。患者さんが必要に応じて“頓服”で使うことも多い薬のため、薬剤師がそれぞれの薬の長所・短所や使い分け、片頭痛治療全体における立ち位置を知っておくと、より具体的な服薬指導ができるようになります。

前編の今回は、使用頻度の高い「一般的な解熱鎮痛薬」と「トリプタン」について解説します。

片頭痛治療薬①:一般的な解熱鎮痛薬(アセトアミノフェン、NSAIDs)

  • 長所:安価で使える、緊張型頭痛にも効果的
  • 短所:症状の重い片頭痛には効果不十分

片頭痛に一般的な解熱鎮痛薬は“効かない”、と思っている人は多いですが、「アセトアミノフェン」や「ロキソプロフェン」といった一般的な解熱鎮痛薬でも、片頭痛に対する有効性が多くの研究で報告されており1,2,3)ガイドラインでも片頭痛に対する初期対応として推奨されています4)

そのため、片頭痛に対して「アセトアミノフェン」やNSAIDsを使うことは薬学的にも間違った対応ではなく、むしろ合理的な対応と言えます。これらの薬は、後述の片頭痛治療薬(例:トリプタン系薬、CGRP関連薬)に比べれば遥かに安価である、という点も大きなメリットの1つです。

ただし、片頭痛の症状が重くなってくると、一般的な解熱鎮痛薬では十分な効果が得られなくなってきます。「薬が足りない」、「もっと強い痛み止めが欲しい」といった相談があった場合には、より効果の高い片頭痛専用の薬への切り替えを検討する必要があります。

緊張型頭痛との見分けが難しい場合は、むしろ一般的な解熱鎮痛薬の方が良い

トリプタン系薬やCGRP関連薬といった薬は、“片頭痛治療薬”であって“痛み止め”ではありません。そのため、片頭痛には効果がありますが、緊張型頭痛には効果がありません。一方で、「アセトアミノフェン」や「ロキソプロフェン」といった一般的な解熱鎮痛薬は、片頭痛だけでなく緊張型頭痛にも効果があります5)

片頭痛治療に対するNSAIDsとトリプタンの長所・短所、使いどころの画像

つまり、頭痛が緊張型頭痛か片頭痛か見分けが難しい場合、あるいは両方の頭痛が併発しているような場合には、いきなり片頭痛治療薬を使うよりも、一般的な解熱鎮痛薬を使って様子を見るのが賢い選択になります。そういった意味で、初期対応で「アセトアミノフェン」やNSAIDsを使う場合は、「片頭痛か緊張型頭痛か」を厳密に見分ける必要性はあまり高くない、と言えます。

片頭痛治療薬②:トリプタン系薬

  • 長所:一般的な解熱鎮痛薬よりも効果的
  • 短所:値段が高い、薬物乱用頭痛のリスクがある

片頭痛に対しては、一般的な解熱鎮痛薬よりも片頭痛専用の治療薬である「トリプタン」の方が効果的6)なため、症状が重い片頭痛の場合には「トリプタン」がよく用いられます。

現在日本で用いられている5種の「トリプタン」に、特に有効性や安全性の面で明確な優劣は確認されていません7)が、吸収の速い(Tmaxが短い)薬剤ほど効果発現が速く、代謝の遅い(t1/2が長い)薬剤ほど効果が長続きする傾向があります8,9)

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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