薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2024年10月24日 児島 悠史

「特定薬剤管理指導加算3」の算定に必須!「RMP資材」①~目的と意義

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☞この記事のポイント
  • 「RMP資材」は、「販売促進のパンフレット」や「服薬指導に役立つリーフレット」 と意味が異なる
  • 「RMP資材」の目的は、臨床試験では確認されていなかった副作用への注意を促すこと
  • 「RMP資材」は、リスク回避とリスク管理のために重要な資料

2024年の改訂で追加された「特定薬剤管理指導加算3」の算定に欠かせない「RMP資材」。今回はこの「RMP資材」とは何なのか、何を目的に作られたものなのか、現場の薬剤師がどう活用すべきなのか、基本的な目的や意義をおさらいします。

「RMP資材」って何?

そもそも「RMP」というのは、医薬品の「Risk Management Plan(リスク管理計画)」の略語です。簡単に言うと、医薬品の研究・開発から審査・承認、実用化、市販後調査という全ステップにおいて、薬のリスクを最小限に抑えて適正に管理するために行われる活動のことを意味します。

「特定薬剤管理指導加算3」に関連して現場の薬剤師が扱う「RMP資材」は、主にこのうち「市販後」のステップにおいて、“患者さんに、安全かつ効果的に薬を使ってもらう”ために用いられる資料、ということになります。

一見すると「販売促進のパンフレット」や「服薬指導に役立つリーフレット」と見分けがつきにくいかもしれませんが、その意味合いは全く異なるため、「RMP資材」には必ずRMP資材であることの記載がありますので、ぜひ一度確認してみてください。

「特定薬剤管理指導加算3」の算定に必須!「RMP資材」①~目的と意義の画像

※「RMP資材」の記載

なぜ「RMP資材」が必要なのか?大事な目的と意義

薬にはリスクがつきもののため、すべての薬は副作用や相互作用などのリスクを踏まえた扱いが必要です。

そういった意味では、薬剤師は常に薬のリスクに注意しており、情報源としては「添付文書」もあるので、敢えて「RMP資材」など無くても大丈夫なのでは?と思うかもしれません。

しかし、わざわざ「RMP資材」というものが作られているのには、大きな理由があります。

医薬品は、細胞や動物を対象にした非臨床試験から、ヒトを対象にした臨床試験など、多くの試験で有効性・安全性を確認した上で承認されます。しかし、有効性・安全性を確認するために最も大規模に行われるPhaseⅢの臨床試験であっても、その被験者は「併用薬が少ない」とか「小児や高齢者を含まない」など、その属性は非常に限定的です(※あまり極端な背景を持つ患者を臨床試験に組み込んでしまうと、薬の“一般的な有効性・安全性”を評価できない)。

そのため、たとえ承認された薬であっても、「併用薬が多い人」とか「小児や高齢者」といった特殊な背景を持つ患者さんに薬を使った際の詳細な有効性や安全性には不透明な面が残っており、実際に薬を使うと“臨床試験では確認されていなかった副作用”が起こることがあります。

☞「臨床試験では起きていなかった副作用」が、実臨床では起きてしまった実例

「平均65歳で合併症のない心不全患者」を対象に行われた臨床試験(RALES study)では、「スピロノラクトン」は重篤な高カリウム血症をあまり起こさず死亡率を軽減する、という結果が得られました1)

しかし、実臨床で「スピロノラクトン」を心不全患者に多く使ったところ、高カリウム血症による入院・死亡が大幅に増加しました2)。これは、臨床試験(RALE study)には組み込まれていなかった、「平均75歳で合併症の多い心不全患者」に「スピロノラクトン」を使ったことが主な要因、と考えられています。

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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