抗菌薬と整腸薬の併用の効果は?注意すべき副作用について知ろう
- 抗菌薬で下痢や軟便を起こすメカニズム
- 抗菌薬治療に整腸薬を併用した際の具体的な効果
- 整腸薬で気を付けたい副作用(稀なもの、よくあるもの)
抗菌薬と一緒に「ビオフェルミン」や「ラックビー」、「ビオスリー」といった整腸薬が一緒に使われている処方箋はよく目にすると思います。こうした整腸薬の併用は、具体的にどういった意義・目的があって行われているのか、意外と知られていない“効果”や“副作用”を踏まえて解説します。
ポイント①:抗菌薬で下痢をするメカニズム~腸内細菌叢の乱れ
細菌感染症の治療に用いる抗菌薬は、感染症の原因となっている細菌だけでなく、そのほかの細菌にも少なからず作用します。特にヒトの腸内に棲みついている腸内細菌は、内服した抗菌薬によって大きな影響を受けるため、腸内細菌叢は大きく乱れることになります。
この腸内細菌叢の乱れによって、下痢や軟便などの消化器症状が引き起こされる、というのが抗菌薬で下痢を起こす主なメカニズムです1)。
しかし、健康な人の腸内細菌叢には復元力がある2)ため、抗菌薬で下痢などの症状が現れたとしてもそれは“一過性”のもので、薬を使い終えて時間が経てば自然と落ち着いてきます。
そのため、多少の下痢や軟便であれば、抗菌薬治療を優先して薬を使い続けるのが一般的な対応です。ただし、下痢に血が混ざっている、下痢で脱水を起こしている、といったような場合には薬の中止を検討する必要があります。
- 抗菌薬でよく起こる下痢は、腸内細菌叢の乱れが原因で起こる“一過性のもの”
- 下痢をしている場合は抗菌薬の中止を検討するのか、具体的な目安は患者さんにも伝える
ポイント②:抗菌薬による下痢をどうやって防ぐか~整腸薬を併用する意義
抗菌薬による下痢や軟便を防ぐには、抗菌薬を使っても腸内細菌叢が大きく乱れないようにすることが重要になります。その1つの方法が「プロバイオティクス」です。「プロバイオティクス」とは、「ヒトの健康に有益な作用を発揮するよう、適切な菌種・量の生菌を摂取すること」と一般的に定義されますが、たとえば乳酸菌やビフィズス菌といった“善玉菌”を補充することがこれに該当します。
実際、適切な「プロバイオティクス」を行うことで、抗菌薬による下痢症状はおよそ半分に減らせることがわかっています3,4)。