インフルエンザ治療薬の「飲み薬」と「吸入薬」の使い分けを知ろう
- 「内服」でも「吸入」でも、臨床的な効果は変わらない
- 小さな子どもに“吸入”は難しいが、吐き気の強い症例には「吸入薬」が適している
- 「ザナミビル」は、小児やB型インフルエンザに対して効果が高い、とする報告がある
前編では内服薬の「オセルタミビル」と「バロキサビル」の使い分けの基本を紹介しましたが、インフルエンザ治療薬には内服薬以外に「ザナミビル(先発:リレンザ)」や「ラニナミビル(先発:イナビル)」といった「吸入薬」もあります。
この「吸入薬」は「内服薬」とどのように使い分ければ良いのか、どういった患者さんの場合に良い薬になるのか、今シーズンの服薬指導にも役立つ基本的なポイントを解説します。
オセルタミビル | ザナミビル | ラニナミビル | |
先発医薬品 | タミフル | リレンザ | イナビル |
作用機序 | ノイラミニダーゼ阻害薬 | ノイラミニダーゼ阻害薬 | ノイラミニダーゼ阻害薬 |
投与経路 | 内服 | 吸入 | 吸入 |
服用回数 | 1日2回、5日間 | 1日2回、5日間 | 1回 |
適用年齢 | 生後2週~ | 5歳~ | 4歳~ |
使い分け① 基本~症状緩和の効果は、「内服薬」と「吸入薬」で変わらない
インフルエンザ治療薬の「吸入薬」には、「ザナミビル」と「ラニナミビル」があります。抗ウイルス薬を“内服”するよりも“吸入”した方が、ウイルスが増殖している喉などに直接薬を届けられる…といったコンセプトで開発された薬ですが、特に「吸入薬」の方が明確によく効くということはなく、臨床的な症状緩和の効果は内服薬の「オセルタミビル」と変わりません1)。
そのため、使い分けに関しては効果よりも“使い勝手”などの方がより重要な基準になります。
重症化抑制の効果にも、目立った違いはなさそう
インフルエンザの重症化を抑制する効果についても、重症化リスクを抱えていない人であればあまり期待できず、入院患者などのハイリスク群であれば効果を期待できる、というのは「内服薬」でも「吸入薬」でも共通しています2,3)。
使い分け② 子ども~第一選択は内服の「オセルタミビル」だが、吸入薬にもメリットがある
「吸入薬」は、飲めば良い「内服薬」と違ってデバイスの扱いが複雑なため、小さな子どもには適しません。特に、インフルエンザに罹患している時は咳をよくしているため、吸入薬を使っても咳込んでしまうことも多々あります。
このことから、「ザナミビル」や「ラニナミビル」といった吸入薬は“吸入ができる場合”に限って推奨され、特に吸入が難しい乳幼児に対しては推奨されていません4)。