薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2024年11月9日 児島 悠史

インフルエンザ治療薬の「飲み薬」と「吸入薬」の使い分けを知ろう

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☞この記事でわかること
  • 「内服」でも「吸入」でも、臨床的な効果は変わらない
  • 小さな子どもに“吸入”は難しいが、吐き気の強い症例には「吸入薬」が適している
  • 「ザナミビル」は、小児やB型インフルエンザに対して効果が高い、とする報告がある

前編では内服薬の「オセルタミビル」と「バロキサビル」の使い分けの基本を紹介しましたが、インフルエンザ 治療薬には内服薬以外に「ザナミビル(先発:リレンザ)」や「ラニナミビル(先発:イナビル)」といった「吸入薬」もあります。

この「吸入薬」は「内服薬」とどのように使い分ければ良いのか、どういった患者さんの場合に良い薬になるのか、今シーズンの服薬指導にも役立つ基本的なポイントを解説します。

オセルタミビル ザナミビル ラニナミビル
先発医薬品 タミフル リレンザ イナビル
作用機序 ノイラミニダーゼ阻害薬 ノイラミニダーゼ阻害薬 ノイラミニダーゼ阻害薬
投与経路 内服 吸入 吸入
服用回数 1日2回、5日間 1日2回、5日間 1回
適用年齢 生後2週~ 5歳~ 4歳~

使い分け① 基本~症状緩和の効果は、「内服薬」と「吸入薬」で変わらない

インフルエンザ 治療薬の「吸入薬」には、「ザナミビル」と「ラニナミビル」があります。抗ウイルス薬を“内服”するよりも“吸入”した方が、ウイルスが増殖している喉などに直接薬を届けられる…といったコンセプトで開発された薬ですが、特に「吸入薬」の方が明確によく効くということはなく、臨床的な症状緩和の効果は内服薬の「オセルタミビル」と変わりません1)

そのため、使い分けに関しては効果よりも“使い勝手”などの方がより重要な基準になります。

重症化抑制の効果にも、目立った違いはなさそう

インフルエンザの重症化を抑制する効果についても、重症化リスクを抱えていない人であればあまり期待できず、入院患者などのハイリスク群であれば効果を期待できる、というのは「内服薬」でも「吸入薬」でも共通しています2,3)

使い分け② 子ども~第一選択は内服の「オセルタミビル」だが、吸入薬にもメリットがある

「吸入薬」は、飲めば良い「内服薬」と違ってデバイスの扱いが複雑なため、小さな子どもには適しません。特に、インフルエンザに罹患している時は咳をよくしているため、吸入薬を使っても咳込んでしまうことも多々あります。

このことから、「ザナミビル」や「ラニナミビル」といった吸入薬は“吸入ができる場合”に限って推奨され、特に吸入が難しい乳幼児に対しては推奨されていません4)

2023/2024シーズンの「インフルエンザ治療・予防指針」における推奨

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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