牛乳・卵・ゼラチンアレルギーがある人に“禁忌”の薬とは?
- 「食物アレルギー」と関連して添付文書上も“禁忌”があるのは「牛乳」・「卵」・「ゼラチン」の3つ
- 「牛乳アレルギー」の人に注意が必要な薬は多く、“禁忌”の記載がないものもある
- 「卵アレルギー」の人に“禁忌”の点眼薬、「ゼラチンアレルギー」の人に“禁忌”の坐薬がある
- 「ゼラチン」は、すべてのカプセル剤やゼリー剤に使われているとは限らない
医薬品の中には、有効成分や添加物に「食物アレルギー」と関連する成分を含むものがあります。こうした薬は、「食物アレルギー」がある患者さんに対しては注意して扱う必要がありますが、今回はそんな薬の中でも、特に警戒が必要な、添付文書上も“禁忌”の指定がある薬について、その理由や注意点も含めて解説します。
“禁忌”の指定があるもの①「牛乳アレルギー」
添付文書上も“禁忌”の指定がある食物アレルギーには「牛乳」「卵」「ゼラチン」の3種があります。
このうち、「牛乳」に対するアレルギーがある患者さんに注意が必要な薬は比較的多く、多岐にわたる薬効分類に存在するため、うっかり見逃してしまわないよう注意が必要です。
牛乳アレルギーがある患者に注意が必要な医薬品
薬効分類 | 医薬品 |
栄養剤 | アミノレバンEN配合散、ラコールNF配合経腸用液、 ラコールNF配合経腸用半固形用剤、イノラス配合経腸用液、 エネーボ配合経腸用液、エンシュア・リキッド、エンシュア・H |
抗真菌薬 (口腔付着剤) |
オラビ錠口腔用 |
制酸薬 | ミルマグ錠 |
生菌製剤 | 耐性乳酸菌散10%「トーワ」 |
止瀉薬 | タンニン酸アルブミン |
吸入薬 | ドライパウダー定量吸入器の吸入薬 (リレンザ、アドエアディスカスなど) |
牛乳アレルギーは、牛乳に含まれる「カゼイン」や「αラクトアルブミン」、「βラクトグロブリン」といったタンパク質に対してアレルギー反応を起こすことが原因です。
そのため、これら牛乳由来のタンパク質を含む医薬品は、いずれも牛乳アレルギーのある患者さんに使うことはできません。
1、各種栄養剤(「アミノレバンEN配合散」や「ラコールNF配合経腸用液」、「エンシュア・リキッド」など)
これら栄養剤には“タンパク源”として牛乳由来の「カゼイン」が利用されています。実際に、牛乳アレルギーのある患者さんが使ってアナフィラキシーショックを起こした症例も報告されている1)ため、注意が必要です。
2、「オラビ錠口腔用」
「オラビ錠口腔用」は、口腔粘膜に付着させるタイプの「ミコナゾール」製剤ですが、この“付着性”を得るために「濃縮乳タンパク質」が添加されています。
添付文書の“禁忌”の項目に「牛乳アレルギー」は記載されていませんが、臨床試験でも牛乳アレルギーの患者さんは被験者から除外されており2)、使用は控えるのが無難です。
3、「ミルマグ錠」
水酸化マグネシウム製剤の「ミルマグ錠」には、添加物として「カゼイン」を含む脱脂粉乳が用いられているため、牛乳アレルギーの患者さんには“禁忌”に指定されています3)。
なお、同じ水酸化マグネシウム製剤でも「ミルマグ内用懸濁液」にはこの添加物は使われていません。
4、「耐性乳酸菌散10%『トーワ』」
生菌製剤である「耐性乳酸菌散10%『トーワ』」は、添付文書上「牛乳アレルギー」のある患者さんには“禁忌”に指定されています4)。