更年期障害のための治療薬「エストロゲン製剤」とは?効果や特徴を知ろう
- 更年期障害の治療に用いられるエストロゲン製剤の種類
- エストロゲン製剤の、経口製剤と経皮製剤の違い
- 更年期障害の治療の“やめどき”
エストロゲンは女性の生活に大きく影響します。特に更年期には分泌が増減をしながら減少していき、「ゆらぎの時期」と言われ日常生活に支障が出ている女性が多くいます。
しかし症状の自覚がなく治療まで辿り着かず、QOLが損なわれている方も多く存在するのが現状です。更年期の治療方法の一つにホルモン補充療法(HRT)があります。使用される薬剤について学んでいきましょう!
ホルモン補充療法の種類と方法を再確認しよう
ホルモン補充療法(HRT)には、子宮摘出後の女性に「エストロゲンのみ」を投与する方法(estrogen therapy:ET)と、子宮を有する女性に「エストロゲン」と「黄体ホルモン」製剤を投与する方法(estrogen-progestogen therapy:EPT)があります。
子宮摘出後や更年期には女性ホルモンの分泌に揺らぎが起こり、様々な心身の不調が現れやすくQOL低下が懸念されます。そこで低下したエストロゲンを補うことを目的としてHRTの実施が検討できます。
ホルモン補充療法で使用されるエストロゲン製剤とは
前編でエストロゲンの種類については説明しましたが、HRTではそのE1:エストロン,E2:エストラジオール,E3:エストリオールが経口剤、貼付剤、ゲル剤及び注射剤として使用されます。
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① 結合型エストロゲン(CEE)
妊馬尿から抽出された17β-エストラジオールと約10種類のエストロゲン様物質で構成され、標的細胞にあるサルファターゼにより加水分解され活性型E1となり、さらにE2に変化して作用します。
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② E2(エストラジオール)製剤
17β-エストラジオールを含む貼付剤とゲル剤の経皮吸収剤が存在します。また、経口剤は肝初回通過効果によりほとんどが失活してしまうため、E2を微粒子加工し効果を示す製剤が開発されました。
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③ E3(エストリオール)製剤
E1やE2と比べてエストロゲン受容体との結合時間が短く親和性も低いため、更年期症状改善効果は弱いですが、副作用の発症も少ないとされています。
投与経路 | 薬剤名 | 適応 | |
結合型エストロゲン | 経口 | プレマリン | 更年期障害 卵巣欠落症状 |
17βエストラジオール | 経皮 | エストラーナ ル・エストロジェル ディビゲル |
更年期障害 卵巣欠落症状 閉経後骨粗鬆症 |
経口 | ジュリナ | 更年期障害 卵巣欠落症状 |
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エストリオール | 経口 | エストリール ホーリン |
更年期障害 老人性骨粗鬆症 膣炎 |
経膣 | エストリール ホーリンV |
膣炎 |
※エストロゲン製剤
また、子宮を有する女性においてEPTを行う(エストロゲンと黄体ホルモン製剤を併用する)理由としては、エストロゲン単独投与による子宮内膜増殖や子宮内膜癌発症を予防するのためである、ということも理解しておく必要があります。EPTを行う患者さんが疑問に思うことのないよう説明ができるようにしておきましょう。
投与経路 | 薬剤名 | 適応 |
経皮 | メノエイドコンビパッチ | 更年期障害 卵巣欠落症状 |
経口 | ウェールナラ | 閉経後骨粗鬆症 |
※卵胞ホルモン・黄体ホルモン配合剤
投与経路 | 商品名 | 成分 |
経口 | プロベラ ヒスロン |
メドロキシプロゲステロン酢酸エステル |
経口 | デュバストン | ジドロゲステロン |
子宮内挿入 | ミレーナ | レボノルゲストレル |
経口 | エフメノ | プロゲステロン (天然型黄体ホルモン) |
※黄体ホルモン製剤
経口剤と経皮剤の違いとは
経口剤と経皮剤の違いは「肝初回通過効果」があるかないかです。