月経困難症やPMS治療薬「エストロゲン含有製剤」の特徴とは?服薬指導で伝えたいこと
- 月経困難症やPMS(月経前症候群)に使うエストロゲン製剤の種類
- エストロゲン製剤で注意が必要な「血栓症」に対する注意喚起の方法
- 新薬『アリッサ配合錠』の特徴と注意点
「月経困難症」や「PMS(月経前症候群)」に用いるエストロゲン製剤は、種類が豊富なことや、血栓症などのリスク説明が難しいことから、苦手意識を抱いている薬剤師も多いと思います。今回は、そんな苦手意識を払拭するために、エストロゲン製剤の基本をおさらいしておきましょう。
エストロゲンとは
エストロゲン(卵胞ホルモン)は女性ホルモンの一種で、思春期頃から分泌量が増え、性成熟期にピークを迎えた後、閉経前になると分泌量が大きく変動しながら減少していきます。
このようにエストロゲンは女性の一生涯の身体の変化に影響を与えるものと言われています。エストエロゲンはestrus(発情・発情期)+gen(生じる)が語源であり、排卵期にその分泌が亢進し、妊娠の準備や女性らしい体づくりといった役割を持つステロイドホルモンの総称です。
エストロゲンの種類が増えた!?
天然型エストロゲンには従来、E1:エストロン、E2:エストラジオール、E3:エストリオールの3種類存在し、最近では新しくE4:エステトロールが注目されています。
E4:エステトロールは胎児由来のエストロゲンであり、妊娠中に胎児の肝臓で産生され妊娠9週目より母体尿中に検出されることが知られています。その特徴的な作用からNEST(native estrogen with selective in tissues)と呼ばれ、核型エストロゲン受容体に対しアゴニスト作用を、膜型エストロゲン受容体に対しアンタゴニスト作用を示します。
そのため膣や子宮内膜、骨、血管系、脳においてエストロゲン活性を示し、乳房上皮細胞においては増殖抑制作用を示すことがin vitroで示されています。
このE4:エステトロールを配合した月経困難症治療薬が2024年12月に新発売となりましたので、従来の月経困難症治療薬との違いについても学んでいきましょう。
月経困難症治療薬の種類
従来、月経困難症治療薬として使用されてきたLEP(Low dose estrogen progestin)製剤は、合成エストロゲンであるエチニルエストラジオール(EE)を含有し、黄体ホルモンとの組み合わせで作られています。
エチニルエストラジオールはエストロゲン活性が高く、肝臓や血管系への影響が心配されており、血栓症のリスクを下げるためにより低用量のものが開発されてきました(※低用量でも血栓症リスクは存在するため注意が必要です)。
それに対し、E4:エステトロールは前述した組織選択性と言う特徴を持つことにより、これまでLEP製剤による治療が困難であった人の新しい選択肢となる可能性も秘めています。
製剤名 |
卵胞ホルモン (エチニルエストラジオール) |
黄体ホルモン | 1シートの錠数 | |
低用量 | ルナベル配合錠LD (後)フリウェル配合錠LD |
0.035mg | 第1世代 ノルエチステロン 1mg |
21錠(実薬) |
超低用量 | ルナベル配合錠ULD (後)フリウェル配合錠ULD |
0.02mg | ||
ジェミーナ配合錠 (後)レボエチ配合錠 |
第2世代 レボノルゲストレル 0.09mg |
21錠(実薬) 28錠(実薬) |
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ヤーズ配合錠 (後)ドロエチ配合錠 |
第4世代 ドロスピレノン 3mg |
24錠(実薬) +4錠(プラセボ) |
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ヤーズフレックス配合錠 | 28錠(実薬) |
エステトロール含有製剤とは
エステトロール水和物15.0mgとドロスピレノン3.0mgを配合したものが、2024年12月に新発売となった『アリッサ配合錠』です。
1シート28錠の製剤で、実薬を24日間服用したのちプラセボ錠を4日間服用する、28日間を1周期として繰り返して服用するものとなります。従来のLEP製剤と同じく、毎日一定の時刻に服用することが必要となります。
服用開始は月経第1日目とされています。新薬ではありますが、14日制限ではなく特例として1シート(28日分)毎の処方になることに注意しましょう。