「規格」や「剤型」で適応症が違う薬①β遮断薬、MRA、SGLT-2阻害薬、ARNI

- 規格(mg)や剤型が変わると適応症も異なる薬の代表的なもの
(心不全治療に用いるβ遮断薬、MRA、SGLT-2阻害薬、ARNI、トルバプタン)
薬には、「規格(mg)」や「剤型(錠剤/散剤)」が変わると「適応症」まで異なるものがいくつかありますが、こうした薬は、特に新人薬剤師にとって調剤業務の“鬼門”になります。“知らなかった”で起こるミスを防ぐためにも、新人薬剤師が調剤業務に携わる前に、予め情報共有をして、ミス防止の対策を徹底しておくことが大切です。
規格や剤型で適応症が違う薬は、調剤に注意!
医薬品の中には「10mg錠」と「20mg錠」のように、規格(mg)が複数存在するものがあります。
これによって、20mgで使いたいときに「10mg錠を2錠」という服薬に負担のかかる処方や、10mgで使いたいときに「20mg錠を半錠」という調剤・保管に手間のかかる処方にしなくて良いようになっています。
しかし、一部の医薬品はこの規格(mg)が変わると適応症まで異なってしまうものがあります。こうした薬の場合、用量を増減する際に安易に別規格を選ぶと、効能を持たない規格で調剤してしまう恐れがあるため、注意が必要です。
数は少ないため、よく使う代表的なものはしっかり押さえておき、店舗で情報共有しておくことが重要です。前編では、近年大きく治療が進歩した「心不全」に関わる薬から、適応症に注意が必要な薬をピックアップして紹介します。
「β遮断薬」の適応症の違い
β遮断薬は、交感神経のβ受容体を遮断することで、血圧を下げたり、心拍数を下げたりといった作用を発揮する薬です。古くから使われている薬ですが、高血圧治療では「主要降圧薬」、心不全治療では「fantastic four」、不整脈治療ではVaughan Williams分類「Ⅱ群」の薬として、幅広い循環器系疾患で今でも薬物治療の中軸を担っています。
しかし、多くの疾患に対して同じ薬を使うとは言え、適切な用法・用量は個々の疾患によって異なるため、規格(mg)や剤型によって適応症が異なる薬が多く、規格・剤型変更には十分な注意が必要です。
「カルベジロール錠」
1.25mg錠 | 2.5mg錠 | 10mg錠 | 20mg錠 | |
本態性高血圧症 | - | - | 〇 | 〇 |
腎実質性高血圧症 | - | - | 〇 | 〇 |
狭心症 | - | - | 〇 | 〇 |
虚血性心疾患または拡張型心筋症に 基づく慢性心不全 |
〇 | 〇 | 〇 | - |
頻脈性心房細動 | - | 〇 | 〇 | 〇 |
「ビソプロロール錠」
0.625mg錠 | 2.5mg錠 | 5mg錠 | |
本態性高血圧症 | - | 〇 | 〇 |
狭心症 | - | 〇 | 〇 |
虚血性心疾患または拡張型心筋症 に基づく慢性心不全 |
〇 | 〇 | 〇 |
心室性期外収縮 | - | 〇 | 〇 |
頻脈性心房細動 | - | 〇 | 〇 |
「メトプロロール錠」
錠 (20mg、40mg) |
L錠、SR錠 (120mg) |
|
本態性高血圧 | 〇 | 〇 |
狭心症 | 〇 | - |
頻脈性不整脈 | 〇 | - |
「カルテオロール錠」
錠 (5mg) |
LAカプセル (15mg) |
細粒 1% |
|
本態性高血圧 | 〇 | 〇 | - |
狭心症 | 〇 | - | 〇 |
不整脈 | 〇 | - | 〇 |
心臓神経症 | 〇 | - | 〇 |