薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2025年3月11日 児島 悠史

「規格」や「剤型」で適応症が違う薬①β遮断薬、MRA、SGLT-2阻害薬、ARNI

「規格」や「剤型」で適応症が違う薬①β遮断薬、MRA、SGLT-2阻害薬、ARNIのメイン画像
☞この記事でわかること
  • 規格(mg)や剤型が変わると適応症も異なる薬の代表的なもの
    (心不全治療に用いるβ遮断薬、MRA、SGLT-2阻害薬、ARNI、トルバプタン)

薬には、「規格(mg)」や「剤型(錠剤/散剤)」が変わると「適応症」まで異なるものがいくつかありますが、こうした薬は、特に新人薬剤師にとって調剤業務の“鬼門”になります。“知らなかった”で起こるミスを防ぐためにも、新人薬剤師が調剤業務に携わる前に、予め情報共有をして、ミス防止の対策を徹底しておくことが大切です。

規格や剤型で適応症が違う薬は、調剤に注意!

医薬品の中には「10mg錠」と「20mg錠」のように、規格(mg)が複数存在するものがあります。

これによって、20mgで使いたいときに「10mg錠を2錠」という服薬に負担のかかる処方や、10mgで使いたいときに「20mg錠を半錠」という調剤・保管に手間のかかる処方にしなくて良いようになっています。

しかし、一部の医薬品はこの規格(mg)が変わると適応症まで異なってしまうものがあります。こうした薬の場合、用量を増減する際に安易に別規格を選ぶと、効能を持たない規格で調剤してしまう恐れがあるため、注意が必要です。

数は少ないため、よく使う代表的なものはしっかり押さえておき、店舗で情報共有しておくことが重要です。前編では、近年大きく治療が進歩した「心不全」に関わる薬から、適応症に注意が必要な薬をピックアップして紹介します。

「β遮断薬」の適応症の違い

β遮断薬は、交感神経のβ受容体を遮断することで、血圧を下げたり、心拍数を下げたりといった作用を発揮する薬です。古くから使われている薬ですが、高血圧治療では「主要降圧薬」、心不全治療では「fantastic four」、不整脈治療ではVaughan Williams分類「Ⅱ群」の薬として、幅広い循環器系疾患で今でも薬物治療の中軸を担っています。

しかし、多くの疾患に対して同じ薬を使うとは言え、適切な用法・用量は個々の疾患によって異なるため、規格(mg)や剤型によって適応症が異なる薬が多く、規格・剤型変更には十分な注意が必要です。

「カルベジロール錠」

1.25mg錠 2.5mg錠 10mg錠 20mg錠
本態性高血圧症 - -
腎実質性高血圧症 - -
狭心症 - -
虚血性心疾患または拡張型心筋症に
基づく慢性心不全
-
頻脈性心房細動 -

「ビソプロロール錠」

0.625mg錠 2.5mg錠 5mg錠
本態性高血圧症 -
狭心症 -
虚血性心疾患または拡張型心筋症
に基づく慢性心不全
心室性期外収縮 -
頻脈性心房細動 -

「メトプロロール錠」


(20mg、40mg)
L錠、SR錠
(120mg)
本態性高血圧
狭心症 -
頻脈性不整脈 -

「カルテオロール錠」


(5mg)
LAカプセル
(15mg)
細粒
1%
本態性高血圧 -
狭心症 -
不整脈 -
心臓神経症 -

「ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬」の適応症の違い

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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