緑内障と抗コリン剤の基礎知識。クロルフェニラミンはNG?フェキソフェナジンはOK?
.jpg?1744961692)
- 緑内障患者さんに使えるかどうかは、その薬が持つ「抗コリン作用」の強さによる
- その薬の「抗コリン作用」の強さは、リスクスケールを参照するとだいたいわかる
緑内障の症状を悪化させる「抗コリン作用」とは?
同じ抗ヒスタミン薬でも、「クロルフェニラミン」や「ジフェンヒドラミン」、「メキタジン」といった薬は緑内障に対して“禁忌”の指定がありますが、一方で「フェキソフェナジン」や「ロラタジン」、「セチリジン」などの薬には“禁忌”の指定がありません。
禁忌 | クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、シプロヘプタジン、アリメマジン、 プロメタジン、クレマスチン、メキタジン |
禁忌ではない | フェキソフェナジン、ロラタジン、ビラスチン、デスロラタジン、ルパタジン、 レボセチリジン、セチリジン、オロパタジン、ベポタスチン、エメダスチン、 エバスチン、エピナスチン、アゼラスチン、ケトチフェン |
※緑内障に対する抗ヒスタミン薬の禁忌指定
基本的に、古いタイプの第一世代の薬は“禁忌”のものが多く、新しいタイプの第二世代の薬は“禁忌ではない”ものが多い傾向にはありますが、第二世代に分類される「メキタジン」では“禁忌”の指定があるなど、完全に統一されているわけではありません。
また、眠気が強く現れる“鎮静性”に分類される「ケトチフェン」では“禁忌”の指定がないなど、眠気の副作用と相関しているわけでもなさそうです。
では、この“禁忌”の指定は何を基準に決められているかというと、それはそれぞれの薬が持つ「抗コリン作用」の強さです。
「抗コリン作用」とは、ムスカリン受容体を遮断し、副交感神経の作用を抑制する作用のことを指します。この「抗コリン作用」は眼にも影響を及ぼし、眼圧を上昇させます。
抗コリン作用が眼圧を上昇させる主なメカニズム
- 抗コリン作用によって、ムスカリン受容体が遮断される
- 毛様体筋が弛緩し、隅角(角膜と虹彩が接合する場所で、眼房水が排水されるところ)が狭くなる
- 眼房水の排水が妨げられて蓄積し、眼圧が上昇する
つまり、強力な「抗コリン作用」を持つ薬ほど眼圧を大きく上昇させるわけです。
そのため、抗ヒスタミン薬の“禁忌”の有無も「抗コリン作用」の強弱によって決まっており、強力な抗コリン作用を持つ「クロルフェニラミン」などは“禁忌”で、抗コリン作用が弱い「フェキソフェナジン」等は“禁忌”の指定がされていない、ということになります。
この「抗コリン作用」の“強さ”、有機化学に詳しい人であれば、薬の構造式を見ればなんとなく想像はできるかもしれませんが、そうでない人はどのように調べれば良いのでしょうか。
このとき役立つのが、個々の薬が持つ抗コリン作用の強さをランク付けした「リスクスケール」という指標です。
薬が持つ「抗コリン作用」の強さを相対的に把握できる「リスクスケール」を活用しよう
「抗コリン作用」は、緑内障の症状を悪化させるだけでなく、前立腺肥大による排尿障害、あるいは高齢者では転倒・骨折1)や、せん妄・認知機能障害2)、誤嚥性肺炎3)など、様々なトラブルの原因になることが知られています。そのため、患者さんが使っている薬全体でどのくらいの「抗コリン作用」があるのか、を把握しておくことは、副作用回避という視点から非常に重要になります。