薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2025年4月21日 児島 悠史

緑内障と抗コリン剤の基礎知識。クロルフェニラミンはNG?フェキソフェナジンはOK?

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☞この記事でわかること
  • 緑内障患者さんに使えるかどうかは、その薬が持つ「抗コリン作用」の強さによる
  • その薬の「抗コリン作用」の強さは、リスクスケールを参照するとだいたいわかる

緑内障の症状を悪化させる「抗コリン作用」とは?

同じ抗ヒスタミン薬でも、「クロルフェニラミン」や「ジフェンヒドラミン」、「メキタジン」といった薬は緑内障に対して“禁忌”の指定がありますが、一方で「フェキソフェナジン」や「ロラタジン」、「セチリジン」などの薬には“禁忌”の指定がありません。

禁忌 クロルフェニラミン、ジフェンヒドラミン、シプロヘプタジン、アリメマジン、
プロメタジン、クレマスチン、メキタジン
禁忌ではない フェキソフェナジン、ロラタジン、ビラスチン、デスロラタジン、ルパタジン、
レボセチリジン、セチリジン、オロパタジン、ベポタスチン、エメダスチン、
エバスチン、エピナスチン、アゼラスチン、ケトチフェン

※緑内障に対する抗ヒスタミン薬の禁忌指定

基本的に、古いタイプの第一世代の薬は“禁忌”のものが多く、新しいタイプの第二世代の薬は“禁忌ではない”ものが多い傾向にはありますが、第二世代に分類される「メキタジン」では“禁忌”の指定があるなど、完全に統一されているわけではありません。

また、眠気が強く現れる“鎮静性”に分類される「ケトチフェン」では“禁忌”の指定がないなど、眠気の副作用と相関しているわけでもなさそうです。

では、この“禁忌”の指定は何を基準に決められているかというと、それはそれぞれの薬が持つ「抗コリン作用」の強さです。

「抗コリン作用」とは、ムスカリン受容体を遮断し、副交感神経の作用を抑制する作用のことを指します。この「抗コリン作用」は眼にも影響を及ぼし、眼圧を上昇させます。

抗コリン作用が眼圧を上昇させる主なメカニズム

  • 抗コリン作用によって、ムスカリン受容体が遮断される
  • 毛様体筋が弛緩し、隅角(角膜と虹彩が接合する場所で、眼房水が排水されるところ)が狭くなる
  • 眼房水の排水が妨げられて蓄積し、眼圧が上昇する

つまり、強力な「抗コリン作用」を持つ薬ほど眼圧を大きく上昇させるわけです。

そのため、抗ヒスタミン薬の“禁忌”の有無も「抗コリン作用」の強弱によって決まっており、強力な抗コリン作用を持つ「クロルフェニラミン」などは“禁忌”で、抗コリン作用が弱い「フェキソフェナジン」等は“禁忌”の指定がされていない、ということになります。

この「抗コリン作用」の“強さ”、有機化学に詳しい人であれば、薬の構造式を見ればなんとなく想像はできるかもしれませんが、そうでない人はどのように調べれば良いのでしょうか。

このとき役立つのが、個々の薬が持つ抗コリン作用の強さをランク付けした「リスクスケール」という指標です。

薬が持つ「抗コリン作用」の強さを相対的に把握できる「リスクスケール」を活用しよう

「抗コリン作用」は、緑内障の症状を悪化させるだけでなく、前立腺肥大による排尿障害、あるいは高齢者では転倒・骨折1)や、せん妄・認知機能障害2)、誤嚥性肺炎3)など、様々なトラブルの原因になることが知られています。そのため、患者さんが使っている薬全体でどのくらいの「抗コリン作用」があるのか、を把握しておくことは、副作用回避という視点から非常に重要になります。

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較の比較と使い分け(羊土社)」。

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