ガスター(ファモチジン)で“せん妄”の副作用はなぜ起こる?H2ブロッカーの意外なメカニズム

- そもそも“せん妄”とはどういう副作用なのか
- 「H2ブロッカー」で、なぜ“せん妄”という副作用が起こるのか
「ガスター(ファモチジン)」を代表とする胃酸分泌抑制薬「H2ブロッカー」では、しばしば“せん妄”の副作用が問題になります。一見すると、胃薬で“せん妄”という精神系の副作用が起こる、ということにピンと来ないかもしれません。
そこで今回は、まずH2ブロッカーで何故“せん妄”という副作用が現れるのか、そのメカニズムを復習しておきましょう。
“せん妄”とは、どんな症状のこと?
“せん妄”とは、一般的には意識混濁に伴って幻覚や錯覚・幻聴などが生じる錯乱状態のことを指します。手術の後や、脱水状態、高熱、アルコールや薬物による中毒症状など様々な要因で起こりますが、一部の薬では通常量の服用でも副作用として起こることがあります。
“せん妄”は、それ自体が生命に関わるものではありませんが、時には興奮状態に陥って危険な行動(例:インフルエンザによる高熱で二階から飛び降りる)に出ることもあるという意味では、警戒しなければならない厄介な副作用と言えます。
また、どれだけ奇妙な幻覚・錯覚であっても、患者本人にとっては現実と区別がつかない上に、しっかりと記憶にも残っていることが多い、という点にも注意が必要です。
“せん妄”の副作用が起こりやすい薬として、「H2ブロッカー」は名前が挙がっている
この“せん妄”の副作用を起こしやすい薬としては、ベンゾジアゼピン系睡眠薬、抗てんかん薬、ステロイドといった薬が並ぶなか、胃薬の「H2ブロッカー」もリスクの高い薬として名前が挙がっています1)。
他の薬に比べて、ここに“胃薬”が名を連ねているのは少し異質で、「胃薬」と“せん妄”という副作用はあまりイメージ的にも繋がらないために、実際にこの副作用については注意喚起も漏れてしまっているケースがよくあります。
しかし、「ガスター(ファモチジン)」に限らず、「H2ブロッカー」に分類される薬はどれも“せん妄”を起こす可能性がある1)とされ、ほぼ同じ目的で使われるPPI(プロトンポンプ阻害薬)と比べても明らかに“せん妄”のリスクは高いことが報告されています2)。そのため、「H2ブロッカー」を使う場合には、この“せん妄”の副作用に十分注意して対応する必要があります。
「H2ブロッカー」で、なぜ“せん妄”の副作用が起こるのか?
アレルギー治療に用いる抗ヒスタミン薬が脳に移行すると、脳のヒスタミンH1受容体をブロックして眠気や集中力の低下をもたらすことは有名です。これは、脳のヒスタミン受容体が覚醒や認知機能に関連しているから起こることです。