ガスター(ファモチジン)の“せん妄”の副作用の回避法。初期症状の見抜き方

- 「H2ブロッカー」で“せん妄”が起こりやすい状況
- “せん妄”を早期発見するために気を付けたい症状
「ガスター(ファモチジン)」を代表とする胃酸分泌抑制薬「H2ブロッカー」で起こる“せん妄”の副作用は、患者本人だけでなく患者家族にとっても非常に厄介なものです。
薬剤師として、この副作用リスクをできるだけ小さく抑え込むためには、どういった点に注意して日常業務に挑む必要があるのか、現場で意識したいポイントを解説します。
「H2ブロッカー」による“せん妄”が起こりやすいのは、どんな時?
前編で解説した通り、「H2ブロッカー」による“せん妄”などの精神系の副作用は、薬が脳のヒスタミンH2受容体にも作用してしまう1)、というのが原因の1つとされています。そのため、基本的にはこの“せん妄”の副作用は、薬理作用の延長線上で起こるもの、つまり薬の血中濃度に依存して起こりやすくなる、と考えることができます。
これを踏まえると、“せん妄”の副作用を避けるには、「H2ブロッカー」の血中濃度が必要以上に高くならないように注意する、といったことが基本になりますが、その最たる例が「腎機能障害」の患者に対する投与です。
腎機能が低下した患者さんに対する「H2ブロッカー」の使い方
「H2ブロッカー」は、基本的に腎排泄型のものが多いため、腎機能が低下した患者さんの場合、通常よりも薬の血中濃度は上昇することになります。
実際、腎機能の低下に伴って「H2ブロッカー」のAUCは比例的に増加していくことが知られていますが、腎機能が低下しているにもかかわらず「H2ブロッカー」の投与量を減らさずに使うと、“せん妄”などの精神系の副作用リスクも血中濃度に応じて比例的に増えていくことがわかっています2)。
このことから、基本的に「H2ブロッカー」は腎機能に応じて用量調節を行う必要があり、これは薬の添付文書にも明記されています3)。
“たかが胃薬”と油断されていることも多い「H2ブロッカー」ですが、まずはこの添付文書の記載に従って、腎機能が低下した患者さんの場合には適宜減量を試みる必要があります。

※『ガスターD錠』添付文書「7.用法及び用量に関連する注意」の記載
なお、薬の減量には、“効果の減弱”というデメリットが常に伴います。「H2ブロッカー」に関しても、減量することで胃潰瘍などの再発を起こしてしまっては意味がないため、その判断は慎重に行う必要があります。