ARBの処方意図①ロサルタンは他の薬剤と何が違う?医師がなぜ選んだか考えよう

- 数あるARBの中で、「ロサルタン(ロサルタンカリウム)」にはどんな特徴があるか
- どんな患者さんに、「ロサルタン(ロサルタンカリウム)」が選ばれるのか
ARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)は、高血圧治療の中心的存在である「主要降圧薬」の一角を担う重要な薬です。現在、日本では7種のARBが使われていますが、ガイドラインでも特にその使い分けは言及されていないため、医師がどういった基準で薬を選んでいるのか、処方意図がわかりにくい部分があります。そこで今回は、ARBの中でも特徴的な薬をピックアップして、その使いどころを解説します。
「ロサルタン(ロサルタンカリウム)」の基本情報
現在、ARBは7種の薬が使われていますが、心血管イベントの抑制効果はどのARBにも共通している1)ため、この7種の薬に特に目立った優劣があるわけではありません。そのため、いずれの薬も高血圧治療の中心を担う「主要降圧薬」として扱われています2)。
一般名 | 先発医薬品名 | 日本での発売年 | |
ロサルタン | ニューロタン | 1998年 | |
カンデサルタン | ブロプレス | 1999年 | |
バルサルタン | ディオバン | 2000年 | |
テルミサルタン | ミカルディス | 2002年 | |
オルメサルタン | オルメテック | 2004年 | |
イルベサルタン | イルベタン | 2008年 | |
アジルサルタン | アジルバ | 2012年 |
※現在使われている7種のARB
「ロサルタン(ロサルタンカリウム)」は、1998年に“初めてのARB”として登場した薬です。
当時は、「レニン・アンジオテンシン系阻害薬」にはまだACE阻害薬(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)しかありませんでしたが、そこにACE阻害薬とほぼ同等の降圧効果を持ち、なおかつACE阻害薬による治療を挫折してしまう最大の問題であった“空咳”の副作用を起こさない薬、として登場した経緯があります。
「ロサルタン(ロサルタンカリウム)」の特徴①~過度の降圧を起こしにくい
「ロサルタン(ロサルタンカリウム)」の最大の特徴は、ARBの中では降圧効果が“弱め”であること4)です。
これは、降圧薬としては単なる弱点のようにも感じられますが、裏を返せば「過度の降圧(低血圧)を起こしにくい」というメリットにもなります。
ARBなどの降圧薬を使う目的は、単に血圧を下げることではなく、血圧を下げることによって血管や心臓、腎臓といった臓器を守ることになります。
そのため、他の降圧薬ではよく低血圧を起こしてしまう人、血圧を下げ過ぎると転倒・骨折などのリスクに繋がる恐れがある高齢者などの場合には、「ロサルタン」のやさしめな降圧効果が最も使いやすい、というケースがよくあります。
「ロサルタン(ロサルタンカリウム)」の特徴②~尿酸排泄作用がある
数あるARBのうち、「ロサルタン(ロサルタンカリウム)」には尿酸排泄作用があることが確認されています5)。