「NSAIDs」による胃粘膜傷害が起こりやすい患者は?~薬の使い方と患者背景

- NSAIDsによる「胃粘膜傷害」のリスクが高くなる患者背景(薬の投与量・期間、年齢、既往歴、併用薬)
「アセトアミノフェン」に比べると、「NSAIDs」の方が解熱・鎮痛・抗炎症の効果は高い1)ものの、「NSAIDs」では“胃が荒れる”副作用を避けることができません。
ただ、そのリスクは薬の使い方や患者背景によって大きく異なるため、個々の患者さんの背景を踏まえたリスク評価を行うことが重要になります。そこで今回は、「NSAIDs」による胃粘膜傷害のリスクはどのような時に大きくなるのか、特に注意したいリスク要因を解説します。
「アセトアミノフェン」と「NSAIDs」の、消化器系の副作用リスク
「NSAIDs」は、発熱や痛み・炎症に関わる「プロスタグランジン」の産生を抑制することで解熱・鎮痛・抗炎症効果を発揮しますが、この「プロスタグランジン」は胃粘膜保護にも関わっています。
そのためNSAIDsを使っている人では、年間1.0~1.5%程度で消化管出血、2.5~4.5%程度で潰瘍などが生じるとされています2)。また、こうしたリスクは、NSAIDsの用量依存的に高まる3)こともわかっています。
一方で「アセトアミノフェン」は「プロスタグランジン」への作用が弱く、こうした用量依存的な消化器系リスクも確認されていません3)。このことから、消化器系の副作用リスクを避けるためにはアセトアミノフェンを選ぶのが合理的な判断になります。
では、胃が弱いからといって、全ての状況で画一的にアセトアミノフェンを選んでおけば良いのかというと、そう簡単な話でもありません。アセトアミノフェンはNSAIDsに比べると効果が劣る1)ため、十分に痛みをコントロールできない場合があるためです。
そこで、アセトアミノフェンかNSAIDsかの選択を考える際には、目の前の患者さんの痛みの強さはどのくらいかだけでなく、NSAIDsはどのくらいのリスクを伴うのかという患者背景をもう少し詳しく掘り下げることが重要になります。
NSAIDsの曝露量が多い:「胃粘膜傷害」リスクが高くなる状況①
「NSAIDs」による胃粘膜傷害は、薬が持つ薬理作用によるものです。そのため、投与量が多い3)、投与期間が長い2)、複数の解熱鎮痛薬を併用している4)といった事情は、リスクを上乗せすることになります。
他医療機関やOTC医薬品との重複によって、想定外の高用量や併用にならないよう注意する必要があります。