咳止めの薬「コデイン」の濫用に注意したい成分をどう扱う?

- 「コデイン」類はどんな薬で、なぜ濫用されているのか
- 「コデイン」類を配合した商品は、どのように扱えば良いか
- 「デキストロメトルファン」は、より安全な代替薬になるかどうか
OTC医薬品には、「濫用などの恐れのある医薬品」として指定されている成分を含む商品が“意外とたくさん”あります。こうした商品を上手に扱うためには、個々の成分のリスクや濫用防止のための対策を押さえておくことが重要になります。今回は、風邪薬や咳止めによく用いられる「リン酸コデイン」や「ジヒドロコデインリン酸」といったコデイン類について解説します。
「コデイン」類ってどんな薬?
「リン酸コデイン」や「ジヒドロコデインリン酸」は、下記のようにモルヒネと似た構造を持つ薬です。現在、日本では麻薬性鎮咳薬として多くのOTC医薬品、特に風邪薬や咳止めに広く配合されています。

※「リン酸コデイン」の構造式
「コデイン」類は、もともとはモルヒネを製造した際の不純物として見つかった物質ですが、モルヒネよりも鎮痛・鎮静作用は弱いものの、咳中枢に対する作用は相対的に強力1)だったことから、各種呼吸器疾患による咳を抑える目的で使われています。
このコデイン類は、効能効果の観点からは風邪を含むさまざまな咳に使うことができますが、実際に効果が確認されているのは痰の絡まない乾いた慢性の咳2)で、風邪のときに出る痰の絡む湿った咳にはほとんど効果を期待できない3,4)とされています。
そのため、風邪薬として積極的に用いる必要性はあまりなく、海外でも風邪薬からは削除される方向に進んでいますが、日本ではまだ多くの風邪薬に配合されている状況にあります。
「コデイン」類は、「濫用などの恐れのある医薬品」に指定されている
咳止めとして用いられる「リン酸コデイン」や「ジヒドロコデインリン酸」といった「コデイン」類は、どちらも「濫用などの恐れのある医薬品」に指定されている薬です。
もともとコデイン類はオピオイド作用を持つため、ドラッグ代わりとして注目され、風邪薬や咳止めといった“身近”で“安価”な商品に配合されていて入手しやすかったこと、「シロップ剤」として販売されていたため“一気飲み”ができたことなどから、既に1980年代には大きな社会問題になっていたからです。
その後、さまざまな規制によって濫用の問題は一時的に沈静化していましたが、現在でも日本では最も濫用されている薬としてコデイン類の名前が挙がっている5)など、問題が解決しているわけではありません。引き続き注意して扱う必要がある薬です。
濫用などの恐れのある医薬品一覧
1 | エフェドリン |
2 | コデイン |
3 | ジヒドロコデイン |
4 | ブロモバレリル尿素 |
5 | プソイドエフェドリン |
6 | メチルエフェドリン |
「コデイン」類を含む商品は、どのように扱う?
先述の通り、「コデイン」類が効果的なのは感染後咳嗽などの乾いた慢性の咳で、風邪のときに出る湿った咳にはほとんど効果を期待できません。