薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2025年7月22日 児島 悠史

「ブロモバレリル尿素」依存から患者を守る!薬剤師が知るべき対応策を解説

咳止めの薬「コデイン」の濫用に注意したい成分をどう扱う?のメイン画像
☞この記事でわかること
  • 「ブロモバレリル尿素」はどんな薬で、なぜ乱用されているのか
  • 「ブロモバレリル尿素」を配合した商品は、どのように扱えば良いか
  • 「アリルイソプロピルアセチル尿素」は、より安全な代替薬になるかどうか

OTC医薬品には、「濫用等のおそれのある医薬品」として指定されている成分を含む商品が“意外とたくさん”あります。こうした商品を上手に扱うためには、個々の成分のリスクや乱用防止のための対策を押さえておくことが重要になります。今回は、中でも頭痛薬によく配合されている「ブロモバレリル尿素」について解説します。

「ブロモバレリル尿素」ってどんな薬?

「ブロモバレリル尿素」は、主に大脳皮質の機能を抑制することで催眠・鎮静の作用を発揮する催眠鎮静薬です。痛みによって感じる不安・不快・恐怖といった疼痛反応を抑えることで“解熱鎮痛薬の作用を助ける”、という目的で、日本では多くのOTC医薬品、特に頭痛薬に広く配合されています。

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※「ブロモバレリル尿素」の構造式

「ブロモバレリル尿素」は、今から120年近く前の1907年に開発された古い薬です。

同じ催眠・鎮静作用を持つ薬として当時主流だった「バルビツール系」の薬に比べると、短時間作用型で使いやすく、また循環器系リスクも低かったことから、催眠や鎮静を目的に広く用いられている時期がありました。

現在でも『ブロバリン』という製剤が医療用医薬品として製造されていますが、1960年以降、より安全で使い勝手の良いベンゾジアゼピン系の薬が登場したことで、医療現場で不眠や不安に対して用いることは少なくなっています。

「ブロモバレリル尿素」は、「濫用等のおそれのある医薬品」に指定されている

「ブロモバレリル尿素」は、「濫用等のおそれのある医薬品」として指定されています。

乱用されている市販薬と言えば、中枢興奮作用を持つ「エフェドリン類」や麻薬性鎮咳薬の「コデイン類」の方が話題になるため、「ブロモバレリル尿素」にあまり乱用のイメージはないかもしれません。

しかし、「ブロモバレリル尿素」は習慣性・依存性を持つことから“習慣性医薬品”にも指定1)されています。

実際に日本で乱用されているOTC医薬品の成分としては「コデイン」に次いで2番目に報告が多く2)、現在の市販薬乱用問題において軽視できない存在になっています。

「濫用等のおそれのある医薬品」一覧

エフェドリン
2 コデイン
3 ジヒドロコデイン
4 ブロモバレリル尿素
5 プソイドエフェドリン
6 メチルエフェドリン

「ブロモバレリル尿素」を含む商品は、どのように扱う?

では、なぜ「ブロモバレリル尿素」がこれほど乱用されているのでしょうか。

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較と使い分け(羊土社)」。

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