イトラコナゾール×ブロチゾラム:併用禁忌じゃないから安心は本当?
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- イトラコナゾールとブロチゾラムを併用した際、血中濃度はどのくらい上昇するか
- その血中濃度は、他の“併用禁忌”の薬と比べて大きいか、小さいか
薬の添付文書に記載されている「併用禁忌」の項目は、薬剤師業務において重要な判断材料になることは確かです。しかし、この「併用禁忌」には掲載されていないから併用しても大丈夫・・・という安易な判断は、時に重大な相互作用リスクに繋がることがあります。今回は、そんな注意すべき組み合わせの代表例である「イトラコナゾール」と「ブロチゾラム」の併用について解説します。
「CYP3A4(チトクロムP450 3A4)」を強力に阻害する薬とは?“併用禁忌”の「トリアゾラム」や「スボレキサント」
「イトラコナゾール」や「ケトコナゾール」はCYP3A4を強く阻害するため、多くの薬と相互作用を起こすリスクがあります。睡眠薬の「トリアゾラム」や「スボレキサント」はその代表例で、いずれも「イトラコナゾール」や「ケトコナゾール」と併用すると血中濃度が大幅に上昇(AUCは2~5倍に上昇1,2,3))することが知られています。こうした睡眠薬の血中濃度上昇は、呼吸抑制などの健康被害にも繋がる恐れがあることから、これらの薬の併用は添付文書上、禁忌”に指定されています。
一方で、「ブロチゾラム」もCYP3A4による代謝を受ける睡眠薬ですが、「イトラコナゾール」や「ケトコナゾール」といった薬とは“併用禁忌”の指定がされていません4)。
CHECK①各医薬品の添付文書の「併用禁忌」の項目
併用禁忌の指定がある、CYP3A4阻害作用を持つ薬剤 | |
ブロチゾラム | (禁忌の指定なし) |
トリアゾラム | イトラコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール、 ミコナゾール、フルコナゾール、ホスフルコナゾール、 アタザナビル、ダルナビル、ホスアンプレナビル、 ニルマトレルビル、リトナビル、エンシトレルビル、 コビシスタット、エファビレンツ |
スボレキサント | イトラコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール、 クラリスロマイシン、リトナビル、エンシトレルビル |
このことから、CYP3A4阻害作用を持つ薬と併用する際の睡眠薬として、「ブロチゾラム」を選んでおけば大丈夫、と安易に判断してしまうケースも少なくありません。
「ブロチゾラム」は、CYP3A4(チトクロムP450 3A4)阻害作用の影響を受けない?
「ブロチゾラム」も、「トリアゾラム」や「スボレキサント」と同じようにCYP3A4(チトクロムP450 3A4)の代謝を受けるため、CYP3A4阻害作用を持つ薬との併用は“注意”が必要です3)。