薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2025年9月3日 児島 悠史

保湿剤の使い分け、どうする?「ワセリン」や「尿素」が選ばれる理由って?

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☞この記事でわかること
  • 「ワセリン」が「ヘパリン類似物質」よりも優れている点
  • 「尿素」が「ヘパリン類似物質」よりも優れている点

前編では、保湿剤として「ヘパリン類似物質」がよく選ばれる理由を紹介しました。しかし、すべての患者・すべての状況において、「ヘパリン類似物質」が最適な保湿剤になるわけではありません。「ワセリン」や「尿素」の方が“適した保湿剤”になるケースもあるからです。今回は、「敢えてヘパリン類似物質を選ばない」状況とはどんな場合か、それぞれの保湿剤の得意分野から解説します。

“豪快に使える”のが最大の武器になる「ワセリン」

「ワセリン」は、保湿剤の中でも最も基本となるもので、ステロイド外用薬などの“基剤”としても用いられているような成分です。平たくいうと“油”なので、塗布することで皮膚表面が油分で覆われ、水分の蒸発を防ぐことができる、というのが保湿効果のメカニズムです。

このワセリンの製剤は、基本的にワセリンだけで作られているため、アルコールなどの添加物が含まれていません。そのため、塗布した際の刺激や皮膚の負担が少なく、多少の傷があっても問題なく使えることができます。

さらに、ワセリンはどの製剤も非常に安価で、「ヘパリン類似物質」に比べると1/2~1/10程度の値段です。

図表:「ヘパリン類似物質」と「ワセリン」の薬価の目安(2025年改訂時)

製剤 薬価(1gあたり)
ワセリン 1.07~2.43
ヘパリン類似物質(先発) 18.20
ヘパリン類似物質(ジェネリック) 3.00~5.60

実際、ヘパリン類似物質は節約するあまりに薄くのばし過ぎると、保湿効果が明らかに弱まってしまう1)ことがわかっています。

そのため、“豪快にたっぷり”と保湿剤を使ってもらいたい場合には、副作用が少なく安価な「ワセリン」の方が適していることも多々あります。

「ワセリン」は皮膚を物理的な刺激から守る“バリア”にもなる

「ワセリン」を塗布すると、皮膚表面は油分でしっかりと覆われることになります。これを“べたつき”と感じることもありますが、その反面、アレルギー物質などが皮膚に直接接触することを防ぐ“バリア”としての機能も果たします。

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較と使い分け(羊土社)」。

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