保湿剤の使い分け、どうする?「ワセリン」や「尿素」が選ばれる理由って?

- 「ワセリン」が「ヘパリン類似物質」よりも優れている点
- 「尿素」が「ヘパリン類似物質」よりも優れている点
前編では、保湿剤として「ヘパリン類似物質」がよく選ばれる理由を紹介しました。しかし、すべての患者・すべての状況において、「ヘパリン類似物質」が最適な保湿剤になるわけではありません。「ワセリン」や「尿素」の方が“適した保湿剤”になるケースもあるからです。今回は、「敢えてヘパリン類似物質を選ばない」状況とはどんな場合か、それぞれの保湿剤の得意分野から解説します。
“豪快に使える”のが最大の武器になる「ワセリン」
「ワセリン」は、保湿剤の中でも最も基本となるもので、ステロイド外用薬などの“基剤”としても用いられているような成分です。平たくいうと“油”なので、塗布することで皮膚表面が油分で覆われ、水分の蒸発を防ぐことができる、というのが保湿効果のメカニズムです。
このワセリンの製剤は、基本的にワセリンだけで作られているため、アルコールなどの添加物が含まれていません。そのため、塗布した際の刺激や皮膚の負担が少なく、多少の傷があっても問題なく使えることができます。
さらに、ワセリンはどの製剤も非常に安価で、「ヘパリン類似物質」に比べると1/2~1/10程度の値段です。
図表:「ヘパリン類似物質」と「ワセリン」の薬価の目安(2025年改訂時)
製剤 | 薬価(1gあたり) |
ワセリン | 1.07~2.43 |
ヘパリン類似物質(先発) | 18.20 |
ヘパリン類似物質(ジェネリック) | 3.00~5.60 |
実際、ヘパリン類似物質は節約するあまりに薄くのばし過ぎると、保湿効果が明らかに弱まってしまう1)ことがわかっています。
そのため、“豪快にたっぷり”と保湿剤を使ってもらいたい場合には、副作用が少なく安価な「ワセリン」の方が適していることも多々あります。
「ワセリン」は皮膚を物理的な刺激から守る“バリア”にもなる
「ワセリン」を塗布すると、皮膚表面は油分でしっかりと覆われることになります。これを“べたつき”と感じることもありますが、その反面、アレルギー物質などが皮膚に直接接触することを防ぐ“バリア”としての機能も果たします。