薬剤師が知っておきたい「PPI(プロトンポンプ阻害薬)長期連用」と骨粗鬆症・骨折リスク

- PPI(プロトンポンプ阻害薬)を長期連用した際に、骨粗しょう症や骨折が起こりやすくなる理由
- 骨粗しょう症や骨折リスクが気になる場合の“代替薬”、ボノプラザンの扱い
PPI(プロトンポンプ阻害薬)は、消化性潰瘍や胃食道逆流症の治療に有益な一方で、一度使われ始めるとそのまま長期連用が常態化してしまうケースも少なくありません。今回は、こうしたPPIの「長期継続使用」に出会った際に中止か継続かを薬剤師が考える上で知っておきたい、PPI連用時の代表的なデメリットである「骨粗しょう症・骨折」について解説します。
PPIが“長期連用”されてしまうのはなぜ?
PPIは、胃酸の分泌を強力に抑えることで、胸焼けや消化性潰瘍の治療、あるいはNSAIDsによる胃粘膜傷害の予防などにも効果のある薬です。
事実、PPIは胸焼けや上部消化管の潰瘍といった症状を緩和させる1)だけでなく、PPIの登場以降は消化性潰瘍が大きく減少している2)など、人類の健康増進に大きく貢献してきた薬であることは間違いありません。
しかし、こうした効果の高さゆえに、「とりあえずPPIを使っておこう」とか「症状は落ち着いたけどもうしばらく継続しておこう」といったように、漫然と長期に渡って使い続けられてしまうケースもよく起こっています。
場合によっては、年単位でPPIが継続処方されていることもありますが、こうした使い方には一定の“リスク・デメリットもある”という視点を持っておく必要があります。
PPIの長期使用と骨粗しょう症・骨折リスクの関係
PPIの服用と「骨密度の低下」や「骨折リスクの上昇」が関連することは、多くの研究で報告されています3,4)。
詳しいメカニズムはわかっていませんが、PPIの累積使用量が多いほど骨折リスクが上昇する3)、低用量や短期使用でもリスク上昇が観察されている4)といった点を踏まえると、PPIが持つ何らかの薬理作用が影響していると考えられます。
実際、胃酸分泌が抑えられることで腸管からのカルシウム吸収が阻害される、PPIが破骨細胞に作用して骨形成が阻害される、といった可能性も示唆されています。そのため、骨折リスクが問題になる人、特に閉経後の女性などにPPIが継続処方されているような場合には、通常よりも注意深く対応を考える必要があります。