薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2025年9月17日 児島 悠史

3分で理解!「PPI(プロトンポンプ阻害薬)長期連用」と小腸・下部消化管出血の関係

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☞この記事でわかること
  • PPI(プロトンポンプ阻害薬)を長期連用した際に、小腸・下部消化管出血を起こしやすくなる理由
  • 小腸・下部消化管出血のリスクが気になる場合の“代替案”

PPI(プロトンポンプ阻害薬)は胃や食道といった上部消化管の潰瘍に対しては治療・予防の効果を発揮しますが、長期連用していると小腸などの下部消化管に対しては、逆に潰瘍や出血を起こす方向に作用することがあります。

こうした小腸・下部消化管出血も、前編で紹介した骨粗鬆症・骨折リスクと同様に注意する必要があります。

PPI(プロトンポンプ阻害薬)の長期連用によるリスク:下部消化管・小腸出血のリスク上昇

PPI(プロトンポンプ阻害薬)は、胃酸の分泌を抑えるため胃や食道といった「上部消化管」の潰瘍や出血を防ぐ効果がありますが、その一方で小腸などの「下部消化管」に対しては逆の影響を及ぼし、むしろ出血を増やす可能性があります1)

これは、PPIが強力に胃酸の分泌を抑えることによって、小腸などの下部消化管の腸内細菌叢が影響を受ける、雑菌が繁殖しやすくなることが一因と考えられています。

特に、NSAIDsの胃粘膜傷害を防ぐ目的でPPIを併用している場合でも、こうした下部消化管に対する悪影響は報告されている2)ことから、「上部消化管」と「下部消化管」への影響は分けて考える必要があります。

PPI(プロトンポンプ阻害薬)による下部消化管・小腸出血のリスクが気になる場合の“代替案”

こうした下部消化管・小腸出血のリスクは、胃粘膜保護薬では観察されていません1)。そのため、症状が落ち着いてきた時点でPPIから胃粘膜保護薬に切り替えることは、下部消化管・小腸出血のリスク軽減に有効な対策と言えます。

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較と使い分け(羊土社)」。

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