腹痛リスクが少ない漢方便秘薬とは?大黄(ダイオウ)を含まない選択肢

- 「大黄(ダイオウ)」はなぜ便秘治療に効果的か、どんな弱点があるか
- 「大黄(ダイオウ)」が配合されていない、便秘治療に使える漢方薬
便秘薬には様々な選択肢がありますが、便秘治療では漢方薬も重要な役割を担っています。今回は、そんな便秘治療に用いられる漢方薬の中から、いざという時に知っておくと役立つ、作用が比較的マイルドで、刺激性下剤に分類される「大黄(ダイオウ)」を含まない漢方薬を紹介します。
便秘治療によく使われる漢方薬「大黄甘草湯」とその弱点
漢方薬は、便秘治療においても広く用いられていますが、その代表的な製剤が「大黄甘草湯(ダイオウカンゾウトウ)」です。
大黄甘草湯は比較的速効性もある便秘薬として重宝されますが、この薬の中心となっているのは「大黄(ダイオウ)」に含まれるセンノシド類です。
センノシド類は「プルゼニド」などの薬としても利用されている効果的な下剤ですが、腸を刺激して蠕動運動を促す“刺激性下剤”に分類され、腹痛などの腹部不快感を伴うことが多い1)、という弱点があります。
便秘治療では、単に排便回数を増やせば良いというわけではなく、こうした腹部不快感をなるべく起こさないように配慮することも重要な目標になります。
「大黄(ダイオウ)」は、便秘治療に用いられる多くの漢方薬に入っている
ところが、「大黄甘草湯(ダイオウカンゾウトウ)」のほかにも「調胃承気湯(チョウイジョウキトウ)」や「桃核承気湯(トウカクジョウキトウ)」、「麻子仁丸(マシニンガン)」といった便秘治療によく用いられる漢方薬の大半に、この大黄(ダイオウ)が配合されています。
そのため、作用がマイルドな薬、腹部不快感のリスクを減らした薬の選択というのが意外と難しいというのが実情です。
図表:便秘によく用いられる代表的な漢方薬の例
製剤 | 構成生薬 |
大黄甘草湯 | 大黄、甘草 |
調胃承気湯 | 大黄、甘草、芒硝 |
桃核承気湯 | 大黄、甘草、芒硝、桂皮、桃仁 |
乙字湯(オツジトウ) | 大黄、甘草、黄芩、当帰、柴胡、升麻 |
潤腸湯(ジュンチョウトウ) | 大黄、甘草、麻子仁、枳実、桃仁、芍薬、厚朴、杏仁、地黄、当帰 |
麻子仁丸 | 大黄、麻子仁、枳実、芍薬、厚朴、杏仁 |
防風通聖散 (ボウフウツウショウサン) |
大黄、甘草、芍薬、芒硝、滑石、黄芩、桔梗、石膏、白朮、荊芥、 山梔子、川芎、当帰、薄荷、防風、麻黄、連翹、生姜 |
では、大黄を含まない、便秘に使える漢方薬は存在しないのかというと、そういうわけでもありません。
効能効果に直接“便秘”と書いてはいなくとも、便秘やそれに伴う症状に対して使うことのできる、大黄を含まない漢方薬もいくつか存在するからです。
「大黄(ダイオウ)」を含まない“便秘”に使える漢方薬
たとえば「桂枝加芍薬湯(ケイシカシャクヤクトウ)」は、「しぶり腹」や「腹痛」に用いる漢方薬2)ですが、「しぶり腹」とは“便意はあるのに少ししか便が出ない”や“少ししか便が出ないのに頻繁に便意を催す”といった症状のことを指します。