薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2025年9月25日 児島 悠史

虚弱(虚証)な人への漢方の風邪薬は?「麻黄」を含まない選択肢

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☞この記事でわかること
  • 「麻黄湯」や「葛根湯」は、「麻黄(マオウ)」を含む製剤で、“実証”の人向きの薬であること
  • “虚証”の人や「麻黄(マオウ)」を避けたいときの風邪薬に、どんな漢方薬を選択肢にできるか

風邪の症状緩和にも漢方薬が用いられる場面は多くあります。今回は、そんな風邪治療に用いられる漢方薬の中から、いざという時に知っておくと役立つ、作用が比較的マイルドで、体力の衰えている患者さんにも使いやすい「麻黄(マオウ)」を含まない漢方薬を紹介します。

風邪治療によく使われる漢方薬「麻黄湯(マオウトウ)」や「葛根湯(カッコントウ)」とその弱点

「麻黄湯」や「葛根湯(カッコントウ)」は、風邪の治療によく用いられる漢方薬の代表です。

風邪の治療にこれらの漢方薬を使うのは、“総合感冒薬よりもリスクが低い”というメリットを重視しているケースが多く、特に葛根湯は“万人向けの安全な風邪薬”というイメージで語られがちです。

確かに、麻薬性鎮咳薬やNSAIDs、血管収縮薬、気管支拡張薬などを多剤配合した総合感冒薬に比べると漢方薬の副作用は少なめかもしれませんが、麻黄湯や葛根湯は“実証”=体力が充実しているタイプの人に適した薬です。

体力の衰えている患者に対しては副作用が現れやすく、慎重に扱う必要がある1)という点は、注意が必要です。

さらに、麻黄湯や葛根湯は「麻黄(マオウ)」が中心となった製剤ですが、麻黄にはエフェドリン類が豊富に含まれています。

そのため、交感神経を刺激することによって循環器系疾患や甲状腺疾患といった病気のコントール状況を悪化させたり、あるいは睡眠を妨げて風邪の療養に支障を来たしたりするリスクを伴います。

図表:風邪によく用いられる代表的な漢方薬の例

製剤 構成生薬
麻黄湯 麻黄、杏仁、桂皮、甘草
葛根湯 麻黄、桂皮、甘草、葛根、大棗、芍薬、生姜

そのため、体力の衰えた高血圧や不整脈・心不全などの疾患のある不眠傾向の高齢者に対して、安易にこれらの漢方薬を使うのはやや非合理的な選択になってしまいます。

では、“虚証”の人にも使いやすい、風邪に使える漢方薬は存在しないのかというと、これもそういうわけでもありません。

“虚証(キョショウ)”の人でも使いやすい風邪の漢方薬

例えば、「麻黄附子細辛湯(マオウブシサイシントウ)」は、“虚証”タイプの人の風邪(急性期)によく用いられる漢方薬で、特に悪寒や節々の痛みや冷感があるような状態に適しています2)

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較と使い分け(羊土社)」。

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