薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2025年11月13日 児島 悠史

「なぜ風邪に抗菌薬はいらない?」患者から聞かれた時の服薬指導法

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☞この記事でわかること
  • 「風邪」に抗菌薬を使ったときに期待できる効果
  • 昔は「風邪」に抗菌薬がよく使われていたのはなぜか

「風邪をひいたので抗菌薬を処方してもらう」。これは、ひと昔前までは当たり前のように見られた考え方です。しかし現在では、風邪に抗菌薬を使うことは全く推奨されておらず、保険診療上も適応を認めないと通知が出されているなど、大きく方向は転換しています。こうした事情を知らない患者さんから「風邪だから抗菌薬を出してもらいたい」と相談された際、薬剤師として適切に対応することは、抗菌薬の適正使用の観点からも非常に重要です。

「風邪」に抗菌薬を使わないのはなぜ?

ヒトに感染症を引き起こす病原体には、細菌・ウイルス・真菌・寄生虫などさまざまなものがあります。これらは全て全く異なる大きさ・構造・増殖方法をしているため、治療にはそれぞれの病原体に適した薬を使う必要があります。

細菌 大腸菌、結核菌、緑膿菌、破傷風菌など
ウイルス インフルエンザウイルス、新型コロナウイルス、ノロウイルスなど
真菌 白癬菌、カンジダなど
寄生虫 アニサキス、マラリア、エキノコックスなど

「抗菌薬」にはペニシリン系、セフェム系、マクロライド系などいろいろな種類のものがありますが、いずれも効果を発揮するのは「細菌」だけです。他の病原体には、基本的に何ら作用することはありません。つまり、「抗菌薬」が有効なのは細菌感染症に限る、ということです。

では、一般的に「風邪」というのはどの病原体によって引き起こされているのか、というと、基本的に「ウイルス」が原因です1)。そのため、「風邪」に細菌を退治する抗菌薬を使っても、特に意味はありません。

実際、風邪の人に「抗菌薬」を使っても、発熱や咳などの臨床症状は改善せず2)、むしろ下痢などの副作用だけが増える3)ことが確認されています。

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較と使い分け(羊土社)」。

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