患者は「風邪は抗菌薬で治る」と誤解している!? 誤解を解く服薬指導のコツ
- 「風邪の時に抗菌薬を飲んだら治った」と感じている患者さんが多いのは何故か
- 医師が、「風邪」の患者さんに抗菌薬を処方してしまうのは何故か
日常業務では、「風邪」と診断された患者さんから「抗菌薬を欲しい」と要望されることは珍しくありません。なぜ「欲しい」と思われてしまうのか、その背景事情を知ると、服薬指導でももう一歩踏み込んだ説明・対応ができるようになります。そこで今回は、なぜ風邪の患者さんは「抗菌薬」を欲しがるのか、その背景に潜むいろいろな“誤解”について解説します。
多くの人は「風邪」は抗菌薬で治ると誤解している
主にウイルスによる感染症である「風邪」に細菌を退治する抗菌薬を使っても効果はない、ということを前編で解説しました。
しかし、こうした事実はあまり国民には知られていません。むしろ、近年の調査でも、8割以上の人が「風邪に抗菌薬は有効だ」と考えているとされています1,2)。
そのため、「風邪」に抗菌薬を使わない、という最近の真っ当な医療に対して、多くの国民は「不適切な治療をされた」、「効果的な薬を処方してくれなかった」と感じている可能性があります。まずは、前編で解説したような「抗菌薬を使っても風邪は治らない」こと、「不必要な抗菌薬を使うことで副作用や耐性リスクだけを負うことになる」ことなどをしっかり説明する必要があります。
なぜ「風邪に抗菌薬を処方された」と感じるのか
患者さんの中には、「風邪のときに抗菌薬を処方され、それを飲んだら治った」という“経験”をしている人が少なくありません。
これは、「患者さんが“風邪”だと自己判断していたものが、実際には細菌感染症だと診断され、抗菌薬が処方された」ケースである、と考えるのが妥当です。たとえば、細菌感染が原因で起こる副鼻腔炎や気管支炎などでも、鼻水や咳などの症状が現れるため、“風邪”だと勘違いされやすいからです。