鎮咳薬の使い分けを極める!咳の3要素(タイプ・原因疾患・患者背景)で選ぼう
- 鎮咳薬は「乾性・湿性の咳のタイプ」、「咳の原因となる疾患」、「小児・高齢者・妊婦などの患者背景」の3点を総合的に考慮して選択する
- 小児や高齢者など、副作用リスクの高い患者背景には特に慎重な対応が求められる
- 鎮咳薬以外の対処法(加湿、安静など)を指導することも大切
前回の記事では、鎮咳薬の分類と作用機序、薬ごとの特徴をお伝えしました。今回はそれぞれの違いをふまえたうえで、鎮咳薬を適切に使い分けられるように、大切なポイントを確認していきましょう。
鎮咳薬を使い分ける時の重要なポイント
鎮咳薬を使い分ける際に注目したいのは、①咳のタイプ(乾性or湿性) ②原因 ③患者の背景の3点です。
1)咳のタイプ
咳には「乾性咳嗽(痰を伴わない乾いた咳)」と「湿性咳嗽(痰がらみのある咳)」の2つのタイプがあります。抑えたいのはどちらの咳なのかを必ず確認しましょう。
なぜなら痰が絡んだ咳では、咳止め薬を使用することで痰の排出を妨げ、症状を悪化させてしまうリスクがあるためです。咳のタイプにあわせた適切な薬選びが大切です。
咳のタイプごとの鎮咳薬の選択
| 咳のタイプ | 症状 | 咳止めの種類と治療方針 |
| 乾性咳嗽 | ・喉の刺激感 ・痰がでない ・夜間に多い |
『中枢性鎮咳薬』 咳を止めてOK 連続的な咳や夜間の咳を軽減する |
| 湿性咳嗽 | ・痰が出る ・呼吸がしづらい ・気管支炎や風邪の後期に多い |
『去痰薬』中心 痰の排出を妨げないようにする 咳止め併用時は慎重に |
2)咳の原因
咳の原因となる疾患によっても、選ぶべき薬が変わってきます。
咳は風邪、気管支炎、COPD、気管支喘息、肺結核、肺がんなどさまざまな病気が原因でおこります。たとえ咳がでていても、気管支喘息の発作時のように、鎮咳薬を控えた方がよい場合もあるでしょう。
まずは原因となる疾患を適切に治療することが大切です。そのうえで咳のコントロールが必要であれば、鎮咳薬や去痰薬、気管支拡張剤などの薬で対症療法をしていきます。
3)患者の背景
鎮咳薬を使用する際は、年齢・併用薬・基礎疾患の有無など、患者背景への配慮も重要です。特に小児・高齢者・妊婦・授乳婦では副作用リスクが高いため、慎重な対応が求められます。
| 対象 | 確認事項 |
| 小児 | ・適応年齢を満たしているか ・12歳未満は麻薬性鎮咳薬が禁忌 ・10代の乱用薬物として市販の鎮咳薬に注意 (デキストロメトルファンなど) |
| 高齢者 | ・肝・腎機能など身体機能の低下 ・眠気やめまいによる転倒 ・便秘の副作用は高齢者が特にでやすい |
| 妊婦・授乳婦 | ・使用の可否(特に中枢性鎮咳薬) ・妊娠の週数にも注意 |
鎮咳薬の代表的な副作用への対策とは?
鎮咳薬を選ぶ際は、できるだけ副作用リスクが少ない薬剤を選択したいところです。
しかし、咳が強くて眠れない、日常生活に支障をきたしているといった場合には、症状の緩和を優先することもあります。代表的な副作用やその対策を把握しておくことで、薬剤選択の幅が広がるでしょう。また、もしも副作用があらわれても、適切な対応が可能です。