薬剤師の気になるトピックをお届け!今月の特集

更新日: 2025年12月15日 児島 悠史

1、抗凝固薬「DOAC」は、用量を減らせば“安全”に使えるのか?

【特集】ハイリスク薬の管理のポイントは?~抗凝固薬編~のメイン画像
☞この記事でわかること
  • 抗凝固薬は、「用量を少なめに減らしておけば安全に使える」というのは本当か

抗凝固薬は「過剰」でも「過少」でも問題がある

「ワルファリン」や「DOAC(直接作用型経口抗凝固薬)」といった抗凝固薬は、「ハイリスク薬」として扱われる薬の代表です。これら抗凝固薬がなぜハイリスクなのか、その最大の要因は、「血栓(薬の作用が不十分)」と「出血(薬の作用が過剰)」のリスクがシーソーの両端にある点にあります。

抗凝固薬「DOAC」は、用量を減らせば“安全”に使えるのか?の画像

抗凝固薬には、血液の凝固を阻止する作用があるため、投与量が多過ぎたり、腎機能障害や併用薬との相互作用などで血中濃度が上昇したりすると、頭蓋内出血や消化管出血といった出血イベントが増えることになります。

しかし、だからといって薬の用量を少なめに抑えればより安全に治療できるかというと、そうとも限りません。必要以上に薬を減らすと、今度は薬の作用が弱過ぎて血栓ができやすくなり、脳梗塞などの血栓イベントを起こすことになるからです。

そのため、抗凝固薬は「過剰」にも「過少」にもならないよう、個々の患者の年齢、体重、腎機能、併用薬、服薬アドヒアランスなどに基づいて投与量を慎重に決め、服薬が始まってからも血色素(Hb)の変化や出血関連の自覚症状(例:大量の鼻血、あざの急増、タール便)などに注意しながら経過観察していく必要があります。

抗凝固薬は、用量を減らせば“安全”に使えるのか?

近年多く使われている「DOAC(直接作用型経口抗凝固薬)」に関しては、「ワルファリン」におけるPT-INRのような臨床検査値も存在しないため、薬の投与量が過剰になっているのか不足しているのかを客観的指標によって判別しにくい、という欠点があります。

そのため、副作用リスクが気になる場合には、“念のため減量して用いる”ことがよくあります。

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児島 悠史
こじま ゆうし

薬剤師 / 薬学修士 / 日本薬剤師会JPALS CL6。
2011年に京都薬科大学大学院を修了後、薬局薬剤師として活動。
「誤解や偏見から生まれる悲劇を、正しい情報提供と教育によって防ぎたい」という理念のもと、ブログ「お薬Q&A~Fizz Drug Information」やTwitter「@Fizz_DI」を使って科学的根拠に基づいた医療情報の発信・共有を行うほか、大学や薬剤師会の研修会の講演、メディア出演・監修、雑誌の連載などにも携わる。
主な著書「薬局ですぐに役立つ薬の比較と使い分け100(羊土社)」、「OTC医薬品の比較と使い分け(羊土社)」。

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