ACE阻害薬の空咳!なぜARBで止まる?薬剤師の対応フロー
- ACE阻害薬特有の副作用である空咳の原因
- ACE阻害薬の「カリクレイン・キニン系」への作用
- ACE阻害薬で空咳が出たときに薬剤師がとるべき対応
高血圧や心不全などの治療で広く使用される「ACE阻害薬」と「ARB」。共通点の多い2種類の薬ですが、空咳の副作用はACE阻害薬特有のものであることはよく知られています。本記事では、その理由と副作用が出た場合の薬剤師の対応について解説します。
「ACE阻害薬」の“空咳”はブラジキニンの蓄積が原因
「ACE阻害薬」による空咳は、発現率5〜35%と比較的よく起こる副作用です。主な原因と考えられているのが、ブラジキニンの蓄積です。
ブラジキニンは感覚神経(特にC繊維)を刺激し、咳反射を亢進するといわれています。ACE阻害薬とARBは”似た作用”があると認識されがちですが、ブラジキニン濃度が上昇しやすいのはACE阻害薬のみです。これは両者が作用する経路に明確な違いがあるためです。
「ACE阻害薬」はRAA系だけでなく「カリクレイン・キニン系」にも作用する
「ACE阻害薬」と「ARB」はいずれも血圧調整に関わるレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)を抑制することで降圧効果を発揮します。
ACE阻害薬はこの経路において、アンジオテンシンⅠからⅡへの変換酵素(ACE)を阻害します。しかし、それだけではなく、同じ酵素(ACE)がカリクレイン・キニン系で担っているブラジキニンの分解も同時に阻害します。
著者作成
このカリクレイン・キニン系への作用こそが、ACE阻害薬特有の副作用を引き起こすポイントです。
一方、ARBはアンジオテンシンⅡがAT1受容体に作用するのを阻害する薬であり、ブラジキニンの分解には関与しません。そのため、同じRAA系を抑える薬であっても、空咳の発現率に大きな差が生じます。