【薬剤師の基本】ACE阻害薬とARB:併用がNGな理由と切り替え基準
- ACE阻害薬とARBの共通点と作用機序の違い
- ACE阻害薬とARBの併用が推奨されない理由
- ACE阻害薬とARBを使い分けるポイント
「ACE阻害薬」と「ARB」は、いずれもレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)を抑制する薬です。作用点が異なるため一見すると併用も可能に思えますが、実際には併用は推奨されていません。本記事では、その理由と臨床での適切な使い分けを整理します。
「ACE阻害薬」と「ARB」の共通点を知ろう
「ACE阻害薬」と「ARB」は、どちらもレニン・アンジオテンシン・アルドステロン系(RAA系)を阻害する薬であり、効果においても多くの共通点を持ちます。
ACE阻害薬とARBの共通点
- いずれも高血圧、心不全、腎疾患に広く使用
- 臓器保護作用を持つ
- 心血管イベント抑制のエビデンスあり
そのため、実臨床では相互に代替可能な場面が多いです。
共通点は多いものの、RAA系における作用点は異なります。
- ACE阻害薬:アンジオテンシンⅠ-Ⅱの変換を阻害
- ARB:アンジオテンシンⅡがAT1受容体に作用するのを阻害
作用点が違うのであれば、「併用でさらに強くRAA系を抑制できるのでは?」とも考えられます。しかし、実際には両者の併用は推奨されていません。
「ACE阻害薬」と「ARB」の併用が推奨されない理由
以前は「ACE阻害薬」と「ARB」を併用することで、RAA系の抑制効果が高まるのではないかと期待されていました。
しかし現在はガイドラインにおいても併用は推奨しないと示されています。
その理由は複数の臨床試験により、併用のリスクがベネフィットを上回ることが明らかになったためです。
「ONTARGET試験」「VA NEPHRON-D試験」の結果
①ONTARGET試験:ACE阻害薬+ARB併用の心血管イベント抑制効果を検証
ラミプリル、テルミサルタンおよび両者の併用を比較した国際大規模試験(対象は血管疾患または高リスク糖尿病を有する25,620名の患者。追跡期間の中央値は56ヵ月)
結果☟: