「SGLT2阻害薬」はなぜ心不全に使う?心不全治療での使い方のキホン
- SGLT2阻害薬を心不全治療に使うのはなぜか
- 心不全治療において、SGLT2阻害薬はどんな立ち位置にあるのか
「ダパグリフロジン(商品名:フォシーガ)」や「エンパグリフロジン(商品名:ジャディアンス)」に代表される「SGLT2阻害薬(Sodium glucose cotransporter-2 inhibitor)」は、もともとは余分な糖を尿中に排泄することで血糖値を下げる、2型糖尿病の治療薬として登場した薬です。
しかし、近年は2型糖尿病以外にもさまざまな疾患の治療に用いられるようになり、特に心不全治療においては重要な役割を担うようになってきています。
そこで今回は、なぜこのSGLT2阻害薬が心不全治療における重要な薬となっているのか、薬剤師としても知っておきたいポイントを解説します。
【心不全×SGLT2阻害薬】なぜこの薬が「標準治療」に位置付けられたのか?
「SGLT2阻害薬」は、もともと2型糖尿病の治療薬として開発された薬です。そのため登場してしばらくの間は、2型糖尿病の患者さんに対して、心血管保護効果を期待して使われていました。
しかし、こうした糖尿病治療が行われているなか、SGLT2阻害薬は糖尿病患者さんの心血管イベント、特に「心不全による入院」を防ぐ効果が高いことがわかってきました1)。
こうした研究結果を受けて、今度は「心不全」に対してSGLT2阻害薬を使ったところ、実際に心不全患者さんの生命予後を改善する効果が確認されました2)。しかも、この効果は“2型糖尿病を抱えていない人”でも得られたことから、SGLT2阻害薬は「2型糖尿病」だけでなく、「心不全」の治療薬としても注目されるようになりました。
こういった「心不全」への効果には、SGLT2阻害薬の利尿作用(糖やNaの排泄促進)や心筋のエネルギー効率改善作用(ケトン体の生成促進)が関係していると考えられています。
その後、「心不全」のなかでも左室の駆出率が低下したタイプのもの(HFrEF)2)だけでなく、左室の駆出率が維持されたタイプのもの(HFpEF)3)でも、SGLT2阻害薬の効果が確認されました。
これら一連の研究結果を受けていまSGLT2阻害薬は、「心不全」の重要な治療薬として位置づけられるようになっています4)。
ただし、現在のところ適応症に「心不全」が含まれるSGLT2阻害薬は、「ダパグリフロジン」と「エンパグリフロジン」の先発医薬品だけです。SGLT2阻害薬の適応症は、薬剤ごと、または先発医薬品か後発医薬品かによって個々に異なる場合があるため、扱いには注意してください。
「SGLT2阻害薬」の適応症の一覧(2026年4月2日時点)
| 薬剤名 | 糖尿病 | 心不全 | 慢性腎臓病 | |
| ダパグリフロジン | 先発 | 1型、2型 | 〇 | 〇 |
| 後発 | 2型 | - | - | |
| エンパグリフロジン | 先発 | 2型 | 〇 | 〇 |
| カナグリフロジン | 先発 | 2型 | - | 〇 |
| イプラグリフロジン | 先発 | 1型、2型 | - | - |
| ルセオグリフロジン | 先発 | 2型 | - | - |
| トホグリフロジン | 先発 | 2型 | - | - |
心不全治療における、SGLT2阻害薬の位置付け・使い方
「SGLT2阻害薬」は、HFrEFとHFpEFのどちらのタイプの心不全治療にも用いられますが、他にも良い薬が揃っているHFrEFと、効果的な薬が乏しいHFpEFでは、SGLT2阻害薬の立ち位置もやや異なります。