尿中排泄率が低いのに腎排泄型?添付文書の落とし穴に要注意!
患者さんからテレビやネットで流れた医療情報について相談を受けたことはありませんか?データに基づいた情報といえども、巧みな拡大解釈により、新薬や健康食品の有効性と安全性は歪曲されて伝わってしまうことがあります。この連載では、患者さんの悩みを解消し、適切な指導をするうえで役に立つ知識を噛み砕いて解説します。
これを読んだらわかる データの読み方のエッセンス
- 添付文書に記載された「尿中未変化体排泄率」が低くても、肝消失型薬剤とは限らない
- 「尿中未変化体排泄率」の分母に注目しよう!
患者の誤解『腎機能が悪いと、薬の用量を減らさないといけない!』
CKD(慢性腎臓病)の患者さんが他科の処方せんを持って来局されました。
「週刊誌で読んだんだけど、腎機能が悪いと薬の副作用が出やすくなるんでしょ!?今日は、かかりつけのクリニックではなく、皮膚科で薬をもらったんだけど、私は腎臓が悪いので用量を減らして飲んだほうがいいのかしら?」
処方された薬剤 ヘルペスバスター錠(※架空の薬)
『飲んではいけない薬!』といったインパクトのあるタイトルで購買意欲を刺激する週刊誌って多いですよね。刺激的で巧妙なタイトルで大勢の読者を釣るわけです。不安を煽れば煽るほど大漁に釣れるんでしょうね(本連載も大勢の方々に読んでいただきたいが、握りしめた釣竿はビクともせず私の記事がバズる気配はない)。週刊誌は「売れればオッケー!」なのかもしれませんが、誤解を生みやすい情報は患者さんの不利益につながることがあります。適切な注意喚起ならありがたいのですが、一般向けに医療情報を発信する場合は、誤解を招かないように細心の注意を払う必要があると思います。
薬剤には大きく分けて腎排泄型と肝消失型があります。肝消失型の場合は腎機能に応じた用量調節が必要とは限らないのですが、この患者さんのように「腎機能が悪いと、すべての薬について用量を調節しないといけない」と誤解している人は多いです。間違った減量を行うと効果が得られない可能性があるため、処方された薬剤が腎機能に応じて用量調節すべきかどうかはきちんと検討する必要がありますね。
『尿中未変化体排泄率が低いから肝消失型薬剤である』とは限らない
では、「ヘルペスバスター」の添付文書を確認してみましょう。「過量投与により胃腸症状や中枢神経症状を起こしやすくなる」と書いてありました。本薬剤が腎排泄型だった場合、腎機能低下例に常用量を投与すると過量投与となり、副作用のリスクが懸念されます。では、「薬物動態」の項目を確認して、腎機能に応じた用量調節が必要かどうか考えてみましょう。