脳梗塞の基礎知識(1)そもそも脳梗塞ってどんな病気?【2025年改訂版】

現在、脳血管疾患の総患者数は188万人を超え、介護要因の疾患トップ3に入っています。病院やクリニックの外来には多くの患者さんが通院されており、臨床の現場では脳梗塞患者へ服薬指導を行うケースも多いのではないでしょうか。この連載では、内科医の視点から「薬剤師が知っておくと役立つ」脳梗塞の基礎知識や治療の変遷について、できるだけ分かりやすく解説します。
1.脳梗塞とは?どんな症状?
脳梗塞を簡単に言えば、「脳の動脈が詰まり脳細胞が死んでしまう」病気です。とはいえ、左右どちらの動脈が詰まったか、太い動脈と細い動脈のどちらが詰まったか、どの程度脳細胞が死んでしまったかなどで症状や重症度は千差万別です。 ちなみに、脳の血管が破ける病気は脳出血、動脈瘤が破裂することはくも膜下出血と言います。脳梗塞、脳出血、くも膜下出血を合わせて脳卒中と総称されます。

2.脳梗塞の種類とは?脳梗塞の見分け方を知ろう
脳梗塞には詰まり方によって、大きく分けて4つのパターンがあります。もちろん、正確にはより細かい分類がありますが、臨床を行ううえで重要なこの4つを覚えてもらえればよいと思います。
4つの脳梗塞のパターン
これらの分類は次のような模式図で表すことができます。そして、分類に応じて治療方針が違うため、検査を経て適切に分類することが必要になります。
1、ラクナ梗塞の模式図

●脳内の細い動脈の閉塞●高血圧・糖尿病・喫煙など●この動脈が破れると脳出血●意識障害・皮質症状はない
(https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/stroke-2国立循環器病研究センターの「脳卒中」を参考に弊社で作成)
2、アテローム血栓性脳梗塞

●頭蓋内外の大きな血管の狭窄閉塞(動脈硬化)●高血圧・糖尿病・脂質異常症・喫煙など●虚血性心疾患の合併に注意●階段状に症状が増悪しやすい●意識障害・皮質症状を伴うこともある
(https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/stroke-2国立循環器病研究センターの「脳卒中」を参考に弊社で作成)
3、心原性脳梗塞の模式図

心臓病が原因(心臓内でできた血栓)●心房細動・急性心筋梗塞・心臓弁膜症・心筋症など●脳梗塞の中では最も重症●突発完成が特徴●意識障害・皮質症状を伴うことが多い
(https://www.ncvc.go.jp/hospital/pub/knowledge/disease/stroke-2国立循環器病研究センターの「脳卒中」を参考に弊社で作成)
3.脳梗塞ってどんな症状が出るの?
脳梗塞の症状は多彩ですが、特に重要なものは次の4つです。
多少の文言の違いはあっても、おそらくどの教科書にもこれらが特徴的な症状として記載されていると思います。私の経験した限りは、麻痺が出て驚いて救急車などで病院へ来るという場合がほとんどでした。重要なのが、これらの症状は多くの場合、突然発生することです。急な症状が発現するわけなので、発症を境に生活が大きく変わってしまうこともしばしばあり恐ろしい病気かと思います。
4.脳梗塞に予兆は無いのか?
全ての例に当てはまるわけではありませんが、脳梗塞の予兆がある場合はあります。この状態のことを一過性脳虚血発作(transient ischemic attack:TIA)と言います。…