脳梗塞と心房細動(1)
現在、脳血管疾患の総患者数は115万人を超え、介護要因の疾患トップとも言われています。在宅医療の現場でも、脳梗塞の患者へ服薬指導を行うケースも多いのではないでしょうか。この連載では、内科医の視点から「薬剤師が知っておくと役立つ」脳梗塞の基礎知識や治療の変遷について、できるだけ分かりやすく解説します。
今回は脳梗塞にとって非常に重要な心房細動についてお話ししたいと思います。心房細動を適切に見極めてしっかり内服をすることは予防にとって重要となります。
1. 心房細動の概要
1-1. 心房細動とは?
心房細動は「無秩序で早くて不規則な電気的興奮が心房に生じて心房収縮の消失と不規則な心室レートを発生させるもの」と定義されます(よく分からないですね…)。要するに心臓の部屋である心房に“通常と異なるパターンの電流”が流れて普段と異なる収縮パターンを取ってしまう状態のことを言います。心電図では不規則な電気活動が散見され、比較的特徴的なパターンを取ります(図1)。心房細動は最も多く見られる頻脈性不整脈であり、80代であれば10人に1人が有すると言われています。
1-2. 原因は?
一番の原因は加齢に伴う心筋細胞の変化です。これにより“通常と異なるパターンの電流”が流れるようになってしまいます。その他の原因としては高血圧症、糖尿病、睡眠時無呼吸症候群、心疾患の合併などが挙げられます。いずれも心筋細胞に変化を引き起こし、その結果として心房細動を引き起こします。…