脳梗塞と心房細動(2)
現在、脳血管疾患の総患者数は115万人を超え、介護要因の疾患トップとも言われています。在宅医療の現場でも、脳梗塞の患者へ服薬指導を行うケースも多いのではないでしょうか。この連載では、内科医の視点から「薬剤師が知っておくと役立つ」脳梗塞の基礎知識や治療の変遷について、できるだけ分かりやすく解説します。今回は前回に引き続き脳梗塞にとって非常に重要な心房細動についてです。前回は心房細動の概要や恐ろしさについてでしたが、今回は心房細動患者への検査法や薬剤の決め方について述べたいと思います。
1. 心房細動患者への検査
脳梗塞発症時点で心房細動が指摘されていない患者で、心房細動を見つけ出すためにいくつかの検査を行います。主な検査は心電図、ホルター心電図、経胸壁心エコー検査、経食道心エコー検査です。それぞれについて簡単に説明していきます。
1-1. 心電図、ホルター心電図検査
心電図は心臓の電気的活動を体表から検知する方法で、健康診断でもおなじみの検査の一つです。ホルター心電図は24時間心電図検査を行う方法であり、心房細動を検出するためには重要です。心房細動は1回の心電図検査で検出することが結構難しく、長時間心房細動が生じている持続性心房細動の他に発作性心房細動という単発で現れる心房細動があるからです。もちろん、24時間でも検出できないこともありますが、1回の心電図検査よりはずっと検出できる確率が高いです。このため入院すれば必須の検査と言えますし、私のいた施設でも必ず行っており多くの発作性心房細動を検出しました。
図1. 心電図検査の模式図(看護roo!看護師イラスト集 より引用)
1-2. 経胸壁心エコー検査
心原性脳塞栓症であれば尚更ですが、それ以外の脳梗塞でも心臓の状態(心臓の動き、弁膜症の有無など)を確認することが重要です。経胸壁心エコー検査は外来でも可能な心機能検査の一つであり、スクリーニングという意味で欠かすことができない検査の一つです。得られる情報はとても多く、心機能が悪い場合は治療方針に関わるため入院後比較的早期に実施していました。欠点としては術者の技量に左右され再現性に乏しいことがありますが、それを差し引いても有り余るメリットがある重要な検査です。
図2. 経胸壁心臓エコー検査の模式図 (看護roo!看護師イラスト集 より引用)
1-3. 経食道心エコー検査
口からエコーを挿入して心臓内部をより詳しく見ることができる検査です。解剖学的に食道と心臓は近い位置にあるため、食道まで到達したエコーから心臓を見ると、いろいろなことをより詳しく判別できます。また大動脈の一部もしっかり見ることができるので、より血管の状態を評価できる検査とも言えます。ただし、これは胃カメラと同じような原理であるため、食道手術後の方や口から挿入することにリスクがある患者さんにはできません。また術中に誤嚥するリスクがあるため、慎重に検査を進める必要があります。
図3. 経食道心エコー検査の模式図
(沼田脳神経外科循環器科病院ホームページ より引用)
2. 心房細動患者のリスク評価
各種検査の結果、心房細動があると判断された患者さんには内服治療を行います。というのも心房細動はごく短時間でも血栓が生じる可能性があるからです。とはいえ、…