脳梗塞患者の処方数を減らすには?
脳梗塞は遭遇する頻度の多い疾患であり、内科医であれば必ず経験すべき疾患の一つです。とはいえ、脳梗塞の治療は日々変化しており、2019年にはガイドラインに新たな知見が加わった『脳卒中ガイドライン2015(2019追補)』が刊行されるほどです。全てを網羅することはできませんが、この連載で薬剤師が知っておくべき基礎知識や治療の変遷を解説したいと思います。なお、分かりやすさを追求するため大雑把な表現や不足の箇所もあるかと思います。温かい目で見守って頂ければ幸いです。
今回は脳梗塞の服薬指導で寄せられた疑問についてお答えしていきたいと思います。もちろん、今回の回答が全てとは言いませんが、指導においての何らかのヒントになれば幸いです。
脳梗塞の服薬指導に関して寄せられた疑問
- 脳梗塞患者は処方がどうしても多くなってしまう。減らす方法などはあるか?
- いつまでDOACを飲み続けるか、抗血小板薬に変更はするのか?
これらは多く寄せられる疑問点で、研修医になった頃は私も感じていました。とても重要な質問であるため、今回はこちらについてお答えしたいと思います。
1. 脳梗塞患者の処方と処方数を減らすことについて
実を言えば、医師になってしばらくは、脳梗塞患者が薬をたくさん飲むことは「仕方がないことだ」と思っていました。なぜなら、まずは急性期をしっかり乗り切ることが大事と考えていたからです。また脳梗塞患者は様々な生活習慣病を合併し(vol.9参照)、それに対する治療薬も追加されます。そうすると、5種類以上の内服になってしまうことはざらにあるのです。
しかし、ポリファーマシー の問題(Dr.竜平の服薬コンプライアンスvol.8)を考えれば何らかの形で対応することは必須です。そこで、近年は外来での経過を踏まえて合剤を使えるかどうかを意識しています。アスピリンとランソプラゾールを内服している方であれば、タケルダ®という合剤に切り替えることがあります。また、1回の薬剤数を減らすため、全てを朝食後に持っていくのではなく、昼・夕食後に分散させることもあります(逆に朝だけ飲む習慣がある方には、意図的に朝だけに内服を集中させます)。なるべく1日1回内服で良い薬を選びつつ、状態に合わせて中止する薬剤がないかを意識しています。薬は飲んで頂かなければ薬効を発揮しません。なるべく負担が少なくなるよう、そして状態評価を通じて適切な処方ができれば良いと思います。
まとめ
- 減らせる薬は減らす
- 合剤にしてみる
- 1回に飲む回数を分散させる
- なるべく1日1回内服のものを選ぶ
2. いつまでDOACを飲み続けるか?
これはとても重要な問題です。しかし、意外とその答えはまだよく分からないというのが実情でもあります。…