脳梗塞患者の服薬指導、皆さんの質問に答えます!服薬コンプライアンス編
現在、脳血管疾患の総患者数は115万人を超え、介護要因の疾患トップとも言われています。在宅医療の現場でも、脳梗塞の患者へ服薬指導を行うケースも多いのではないでしょうか。この連載では、内科医の視点から「薬剤師が知っておくと役立つ」脳梗塞の基礎知識や治療の変遷について、できるだけ分かりやすく解説します。
今回も「脳梗塞患者の服薬指導」について、m3薬剤師会員の皆さんから寄せられた疑問にお答えしたいと思います。指導においての何らかのヒントになれば幸いです。
◆「脳梗塞患者への服薬指導」アンケートまとめはこちら>>>
脳梗塞患者への服薬指導で困っていること
- 一包化によって患者さんが混乱してしまい内服がうまくできていなかった。
- 「飲んだ」と言っていたのに、在宅訪問したらゴミ箱に薬が捨てられていた。
「どうしたら薬を飲んでもらえるのだろう」という服薬コンプライアンスに関する悩みは非常に重要で、医師が意識しにくい問題の一つです。大学病院などに勤務時代は全然わかりませんでしたが、診療所で外来をやっているとこういうことが問題になるのだと認識したものでした(参考:Dr.竜平の服薬コンプライアンス「医師が意識しにくい一包化の落とし穴」)
各所からの意見を集約し共有化する
脳梗塞患者ではありませんが、先日、似たような状況がありましたので紹介したいと思います。症例は90代女性で認知症があるものの、自宅で自力生活を行っていました。あるとき、不穏が強くなったと訪問看護師より連絡があり内服での対応を開始しました。しかし、女性は認知症のため、処方を受けたことを忘れてしまい、かつ内服したことも忘れてしまいます。さらには、どこにしまっていたかも忘れてしまうため、看護師や薬剤師が訪問してもどこにあるかがさっぱりわからず困るという状態でした。そこで、各所からの意見を踏まえ、服薬コンプライアンスを向上させるため、次のような対応をすることにしました。
①命に関わる薬以外は極力削除し処方数を減らす。
実は漫然と処方されている薬がたくさんある場合があります。定期的にチェックして不要な薬は削除することで内服量や有害事象を減らせます。
②なるべく1日1回だけ内服すれば良い薬に変更する。
内服回数が増えることも服薬コンプライアンスを下げる要因です。1日1回決まった時間に飲むという処方に変更するだけでもコンプライアンスは結構向上します。
③薬の置き場を医療者全員が共有する。
患者さんの承認を得て、という前提ですが、とにかく薬は集約化が重要です。同じ場所に置いておけば、薬の減り方も一目瞭然です。またさまざまな医療従事者が介入することがあり、情報共有の面でも利点は多いです。
④薬は朝、昼、夕食後のいずれかに一元化する。
意外と朝食後に医療スタッフがご自宅を訪問するのは難しいです。1日だけならまだしも、毎日は絶対に無理です。故に昼食後(もしくは夕食後)に内服する形にして医療スタッフの負担を分散させることも大事です。
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