疑問にお答えします(4)
脳梗塞は遭遇する頻度の多い疾患であり、内科医であれば必ず経験すべき疾患の一つです。とはいえ、脳梗塞の治療は日々変化しており、2019年にはガイドラインに新たな知見が加わった『脳卒中ガイドライン2015(2019追補)』が刊行されるほどです。全てを網羅することはできませんが、この連載で薬剤師が知っておくべき基礎知識や治療の変遷を解説したいと思います。なお、分かりやすさを追求するため大雑把な表現や不足の箇所もあるかと思います。温かい目で見守って頂ければ幸いです。
今回は抗血小板薬、抗凝固薬の休止について寄せられた質問について回答していきたいと思います。
寄せられた疑問(1)
- 抗血小板薬、抗凝固薬を服薬患者が手術や内視鏡を受ける際の休薬期間は?
- 怪我や出血での休薬期間は?
この疑問はとても重要で、医療事故に繋がりかねないことなので、我々もかなり慎重になります。基本的には薬理学的、解剖生理学的な見地からガイドラインや病院ごとの内規が作成されています。また、手術の侵襲度(要するにどれくらい大きな手術になるか)や患者さん自体の病状によっても対応は変化します。
主な薬剤の休薬期間を下記に示しますが、施設や患者状況により変化するのであくまで目安にとどめてください。 手術終了後は術後状態を見極めつつ1〜2日後には抗血栓薬を再開します。なお、怪我や出血での休薬期間は程度によって千差万別ですので、担当医にお尋ねください。
抜歯、小手術
ワルファリン–PT-INRが3.0以下であれば内服継続で手技可能
DOAC–内服継続で手技可能
バイアスピリン–内服継続で手技可能
クロピドグレル–内服継続で手技可能
内視鏡手術
ワルファリン–低危険度:PT-INRが至適範囲内なら内服継続で手技実施高危険度:ヘパリン置換
DOAC–低危険度:内服継続で手技実施(ガイドライン記載なし)高危険度:状態により前日休薬 (ガイドライン記載なし)
バイアスピリン–低危険度:内服継続で手技実施高危険度:状態により3-5日前から休薬
クロピドグレル–低危険度:内服継続で手技実施高危険度:状態により5-7日前から休薬
大手術
ワルファリン–入院の上、手術3〜5日前に中止してヘパリンに置換
DOAC–一般に24時間以上の休薬
*ダビガトラン–24時間〜4日間の休薬
バイアスピリン–手術の約7〜14日間に休薬
クロピドグレル−手術の約7〜14日間
筆者注)施設毎にガイドラインを定めている場合があり、かつ患者状態によって日数は変動し得ます。上記はあくまで目安であることを十分ご留意ください。
寄せられた疑問(2)
- リハビリによる回復度合いは予測できるか?
- リハビリ中の患者さんへの適切な対応を知りたい