【医師が解説】手術前の抗血栓薬。確実な休薬期間設定を知ろう
現在、脳血管疾患の総患者数は188万人を超え、介護要因の疾患トップ3に入っています。病院やクリニックの外来には多くの患者さんが通院されており、臨床の現場では脳梗塞患者へ服薬指導を行うケースも多いのではないでしょうか。この連載では、内科医の視点から「薬剤師が知っておくと役立つ」脳梗塞の基礎知識や治療の変遷について、できるだけ分かりやすく解説します。
抗血栓薬、手術前の確実な休薬期間設定を知ろう
薬剤師の先生が抱く疑問点として次のことが挙げられます。
「抗血小板薬や抗凝固薬を服薬患者が手術を受ける際の休薬期間をどうするか?」
特に病院勤務の薬剤師の先生であれば、日々目にする光景であるかと思います。また薬局勤務の薬剤師の先生であれば、普段来ている患者さんが手術のため入院をするということはよくある事です。
これらの場合に、抗血小板薬や抗凝固薬は手術前後でどう取り扱うべきか悩ましい事だと思います。この疑問は非常に重要で、抗血小板薬や抗凝固薬を飲んでいる方が手術を受ける際には休薬期間が必要かを吟味しなければなりません。
というのも、本来は休薬が必要なのに、それをせず手術を受けてしまえば医療事故です。よって我々医療者は内服薬を慎重に確認して対応することが必要になります。
止めすぎず、再開遅れず。抗血栓薬は術後の判断が重要
休薬が必要か、または期間はどの程度なのかはガイドラインに示されています1)。基本的には薬理学的、解剖生理学的な知見や報告されている論文などからガイドラインが示されています。また病院ごとの内規が作成されていることもあります2), 3)。
ただし手術の侵襲度(要するにどれくらい大きな手術になるか)や患者さん自体の全身状態により個別対応は変化する可能性があります。
特に昨今は高齢化の影響で多様な疾患を抱えている患者さんが増加しています。そうなるとガイドラインでの話とは必ずしも一致しない場合が出てきます。この場合には患者さんごとに主治医の判断となりますので、疑問点がある場合は主治医とコンタクトを取り情報共有する必要があるでしょう。