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更新日: 2019年12月19日

電子薬歴のメリット・デメリットとは?普及率や紙薬歴との比較を解説

電子薬歴 メリット・デメリットとは?普及率や紙薬歴との比較を解説の画像

増えつづける薬歴を、効率よく、安全に管理できる方法を検討している薬局は多いはず。
電子薬歴を導入することで、どのような影響があるのか、薬剤師・患者さん、それぞれの立場から考えられるメリット・デメリットについて、詳しく説明します。

1.電子薬歴とは

電子薬歴とは従来、紙に手書きしていた薬歴をパソコンやタブレット端末を通じて電子データとして記録しておくシステムのことです。

電子薬歴の機能はレセプトコンピューター(レセコン)に付属している場合がほとんどのため、レセコンの普及に伴い現在では多くの薬局で電子薬歴システムが導入されています。

電子薬歴に入力する内容は、投薬時の服薬指導の内容(SOAP)に留まらず、患者さんの副作用に関する情報、疑義照会の内容、調剤時の患者さんごとの注意点など多岐に渡ります。電子薬歴はこのように、患者さんのあらゆる情報を一元的に管理することができる大変便利なシステムです。

電子薬歴に記入すべき具体的な事項としては、主に以下のようなものがあります。

  1. 患者さんについての各種個人情報(名前・性別・生年月日・保険番号・住所・電話番号など)
  2. 患者さんの体質に関する情報(医薬品の副作用歴やアレルギーの有無など)
  3. 患者さんの生活環境に関する情報
  4. 患者さんの疾患に関する情報(現疾患・既往歴など)
  5. 患者さんの併用薬に関する情報(医療用医薬品、OTC医薬品、健康食品など)
  6. 過去の処方せん調剤の内容
  7. 後発(ジェネリック)医薬品に対する患者さんの希望
  8. 服薬指導の内容(SOAP形式で記入することが多い)
  9. 患者さんの服薬状況(残薬の有無など)
  10. 患者さんのお薬手帳の活用状況
  11. 患者さんの継続的な薬学管理についての注意点

このように電子薬歴は個々の患者さんについて薬局が管理するほぼ全ての情報が入っています。このため、電子薬歴は患者さんのプライバシーの塊とも言えるものであり、その取り扱いには細心の注意を払わなければなりません。コンピューターウィルスなどによる情報漏洩を防止するのはもちろんのこと、薬局業務に従事しない第三者が容易に閲覧できないように、電子薬歴を補完するレセコンには常にロックをかけておくなどの措置も必要となります。

昨今は企業のネットワークシステムに対する不正アクセスなどによる、顧客情報の流出などが大きな社会問題となっています。電子薬歴も大変便利なシステムである反面、こうした情報漏洩のリスクが存在することはしっかりと頭に入れておく必要があると言えるでしょう。

2.電子薬歴の普及率

現在、電子薬歴はどの程度まで普及しているのでしょうか。日本全国には6万店近くの薬局があり、これらのすべてを対象にした電子薬歴普及率の調査は実施されていません。このため、正確な数値を算出することはできませんが、各種の団体が行った調査によると以下のような結果が出ています。

【日経ドラッグインフォメーション調査】(*)

薬剤師に人気の情報誌「日経ドラッグインフォメーション」が2015年に日経ドラッグインフォメーションOnlineの薬剤師会員を対象に行ったアンケート調査によると、以下のように、約7割の薬局が電子薬歴システムを採用していたとの結果が得られています。

薬局における各薬歴記載システムの割合
「キーボード入力による電子薬歴」:66.1%
「音声入力による電子薬歴」:3.8%
「紙薬歴」:21.0%

https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/di/column/dioclub/201510/544077.html

また、調査時点で「紙薬歴」で記入していた薬局のうち約4%が電子薬歴への移行を検討していたことから、2019年現在ではさらに高い割合の薬局が電子薬歴を導入していると推測することができます。

【千葉県薬剤師会の調査】(*)

2015年に千葉県薬剤師会が千葉県内の薬局を対象として実施したアンケート調査によると、電子薬歴の普及率は約50%とのことでした。これは、先の日経ドラッグインフォメーションの結果と比べて少な目になっています。日経ドラッグインフォメーション調査は全国の薬局を対象として実施していることから、地域によりある程度普及率の偏りがあると言えるでしょう。ただし、これも2015年の調査結果ですので、2019年現在ではさらに普及率は上昇していると考えられます。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jjphcs/41/10/41_705/_pdf

これら2つの調査から、全国的な電子薬歴の普及率は約50~70%と推測することができます。また、この割合は今後のICT(情報通信技術)の発達に伴ってますます上昇していくと考えられており、将来的にはほとんどの薬局が電子薬歴を導入することになるでしょう。
薬剤師にとって電子薬歴を使いこなす技術は、調剤、監査、服薬指導などのスキルと同様にもはや必須と言えるでしょう。

3.電子薬歴の特徴

①データの保管方法

電子薬歴は個々の患者さんの薬歴を電子データとして保管しますが、この保管の仕方には主にレセコン保管型とクラウド保管型の2通りの方法があります。導入するレセコンの種類によってどのシステムを採用しているかが異なりますので、詳細については各レセコンメーカーに確認する必要があります。

レセコン保管型

薬局に設置してあるレセコンに直接、電子薬歴のデータを保存するタイプです。インターネットに接続せずにデータを閲覧することができますが、パソコンが故障するとデータが消滅するリスクがあります。また、通常は他端末からデータにアクセスすることもできません。

クラウド保管型

レセコンからインターネットを経由して、クラウド型サーバーに電子薬歴のデータを保管するタイプです。このタイプのメリットは、複数のパソコンやタブレット端末で薬歴データを共有できることです。また、同一グループ内の薬局であれば複数の店舗間でデータを共有することも可能であり、本部で薬歴情報を一元的に管理することも可能になります。外出先で携帯端末からも薬歴データにアクセスできるなど在宅医療にも活かせる仕様となっており、今後はこちらのタイプがますます普及していくと考えられています。

②火災、盗難などに強い

電子薬歴は電子データのため、外付けハードディスクやクラウド上にバックアップを取っておくことが可能です。このため、薬局が火災被害に遭ったような場合でもデータを保全することができます。これに対して紙薬歴は物理的な障害に弱いため、火事や盗難などによるデータ紛失の可能性が電子薬歴に比べて高くなります。一方で、電子薬歴にはコンピューターウィルスなどによりインターネット回線を通じて情報が漏洩するリスクもあるため、こうした点については万全のセキュリティ対策を取るなどして注意を払う必要があります。

③保管場所を取らない

薬歴データの保管場所をほとんど必要としない点は、紙薬歴にはない電子薬歴の大きな特徴です。電子薬歴はすべての薬歴についての情報を電子データとして保管するため、基本的にはパソコン1台を置くスペースさえあれば事足ります。これに対して紙薬歴は数千~数万人の患者さんの薬歴をいつでも取り出せるように並べておく必要があるため、保管のための大きなスペースが必要となり、管理に要する手間も膨大なものとなります。

④添付文書などの情報にアクセスできる

電子薬歴は、薬歴の入力画面が添付文書の閲覧サービスと連動していることが多いため、薬歴を入力する際の調べものが簡単にできるという特徴があります。薬歴入力画面に今回処方された薬の内容が併せて表示されるため、調べたい薬をクリックするだけでその薬の添付文書が閲覧できるなどの便利な機能が付いているシステムも多くあります。

4.電子薬歴でできるようになったこと

①グループ薬局内で情報を共有できる

調剤薬局はの各地に複数の店舗を展開しているケースが多くあります。電子薬歴のシステムを導入していれば、こうしたグループ薬局全体で患者さんの薬歴、処方歴、副作用歴などの情報を共有して一元的に管理することが可能となります。
患者さんはグループ内の薬局であればどの店舗に処方せんを持参しても同じサービスが受けられることになるため、利便性が大きく向上します。

また、多店舗展開する薬局では、ある店舗で薬剤師が不足しているときに別の店舗の薬剤師が応援に行くケースがありますが、その時に、自分が普段使用しているタブレット端末を持参することで、他店舗のヘルプでもこの端末を使って薬歴を記入するなど自店舗と同じペースで業務を遂行することが可能となります。

②薬局以外でもタブレット端末で薬歴を閲覧できる

高齢化が進むにつれて、近年、在宅医療の需要が増々高まっています。最近はタブレット端末からレセコンの薬歴や処方歴などの情報に容易にアクセスできる環境が整いつつあるため、電子薬歴を導入していれば、患者さん宅などでも適宜薬歴を閲覧することが可能となっています。また、在宅医療時に患者さんから聞き取った情報をその場で端末に入力することもできます。

③すべての人が読みやすい薬歴を作成できる

薬歴は複数の薬剤師が参照するため、他の薬剤師も容易に内容を理解できるように読みやすい字で記入することが大切になります。しかし、どう見ても本人にしか判別できない筆跡で薬歴を記入する方もおり、こうしたことが原因で人間関係上のトラブルに発展する事例も見受けられます。また、厚生局が実施する薬局個別指導においても薬歴の提出が求められますが、汚い字で雑に綴った薬歴は指導官の印象を悪くし、薬局の評価を下げることにもつながりかねません。一方で電子薬歴では(文章の読みやすさの問題は別として)こうした問題は発生しないため、薬歴の質を担保することが可能となります。

④定型文の入力が容易にできる(時間の短縮)

電子薬歴のシステムでは、パソコンやタブレット端末上に自分が頻繁に使う定型文を登録しておくことで、素早く薬歴を入力することが可能です。例えば、点眼薬の服薬指導でよく使う文言「複数の点眼薬を同時に使用する際は、5分くらい間隔を空けて点眼するように指導しました」を定型文として登録しておくことで、「ふく」などと初めの2文字程度を入力するだけでこの文言を呼び出すことができます。こうした定型文を登録しておくことで、紙薬歴よりずっと短い時間で薬歴を入力することが可能になります。また、レセコンによってはあらかじめ定型文が登録されているタイプのものもあり、忙しい薬剤師にとっては大変便利な機能となっています。

⑤患者さんの情報に素早くアクセスできる

電子薬歴は患者さんの生年月日や氏名を入力するだけで、必要な患者さん情報にアクセスすることができます。紙薬歴の場合は、大きなキャビネットなどに50音順に並べられた膨大な数の薬歴の中から目的とする患者さんの物を探し当てないといけないため、非常に手間がかかりますが、こうした手間は電子薬歴ではかかりません。

5.電子薬歴の課題

①タッチタイピングスキルが必要

電子薬歴を記入する際には、基本的にパソコンに付属したキーボードを使用することになります。このため、手早く正確に薬歴を記入するにはある程度のタッチタイピングスキルが必要となります。パソコン操作に不慣れな年配の薬剤師の方などにとっては、大きな障害となるかもしれません。普段はスマートフォンしか扱わない若者世代にとっても同じことが言えるでしょう。ただし、現在は音声入力に対応したレセコンなども増えつつあります。精度の高いものであればタッチタイピングよりもはるかに早いスピードで入力することも可能ですので、こうしたレセコンやタブレット端末の普及が課題となります。

②目が疲れる

現在はスマートフォンやパソコンが日常生活に幅広く浸透しており、多くの人々が眼を酷使する機会が増えています。電子薬歴についても同様で、入力や閲覧に際して常にパソコンのモニターやタブレット端末を凝視することになるため、ブルーライトが大きな目の負担になるという方もいることでしょう。今後は目に優しいブルーライト低減タイプの端末の開発も電子薬歴普及にとっての課題の一つと言えるでしょう。

③災害時に使えない

電子薬歴の大きなデメリットとして、災害などにより電源の供給が途絶えた状態では使用できなくなる可能性があげられます。東日本大震災のような大災害により大規模な停電が発生すると、レセコン自体が立ち上がらなくなります。当然、電子薬歴を含む、あらゆる患者さん情報にアクセスすることができなくなります。こうした事態に対応するためには、非常用の電源を確保したり、タブレットなどのコンセント接続を必要としない端末からサーバ経由で電子薬歴を閲覧できるようにしたりするなどの対策が必要となりますが、現段階では対応できていない薬局が大半です。

④端末の数に限りがある

現時点では電子薬歴はレセコンを使用して記入することがほとんどです。このため、他のスタッフが電子薬歴を記入している場合はもちろんのこと、処方せん入力、レセプト業務、発注業務などのレセコンを使った作業をしている間は電子薬歴を入力することができません。薬剤師が密集している昼の時間帯などは、レセコンの奪い合いになることも多々あります。
レセコンが複数台ある薬局であれば良いのでしょうが、費用やスペースの都合もあり、現実には難しい場合も多いです。

その点、紙薬歴であればテーブルなど書くスペースさえあれば複数の薬剤師が同時に記入することができます。こうした点は電子薬歴のデメリットであり、解決すべき今後の課題とも言えるでしょう。
ただし、現在ではパソコンがなくともiPadなどのタブレット端末があれば電子薬歴を記入できるシステムも普及しつつあります。薬剤師が一人一台タブレットを所持しながら服薬指導や薬歴記入を担当できる時代は、すぐそこまで来ていると言えます。

⑤費用が掛かる

電子薬歴の課題の一つとして導入コストが挙げられます。特に音声入力システムなどのハイレベルな環境を整えようとすると、紙薬歴の場合と比較して多くのコストが必要になります。ただし、今後、ICTの発展により、薬剤師一人ひとりが携帯端末を持つことが当たり前の時代が来れば、こうした費用の負担も次第に少なくなってくると考えられます。

6.まとめ

現在、ICTは加速的なスピードで発達を遂げており、これに伴い薬局を取り巻く環境も大きく変化しつつあります。電子薬歴についても今後はますます普及が進んでいくと考えられており、近い将来、ほぼ全ての薬局が電子薬歴を導入する可能性が高いです。

このため、薬歴は紙でしか記入したことがないという方やコンピュータやタブレットの操作に大きな不安があるという方は、時代の変化に取り残されないためにも、タッチタイピングを習得するなどの対策をとることが急務といえるでしょう。

本記事を通じて少しでも多くの薬剤師の方が電子薬歴について興味を持ち、そのメリットを実感していただけると幸いです。

筆者プロフィール

某調剤薬局に勤める薬剤師。一般薬剤師として7年、管理薬剤師として3年の勤務経験あり。本業の傍らで、web媒体を中心に医薬品解説や薬剤師転職関連などの記事を幅広く執筆中。

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