薬剤師のいまを知るトピックまとめ

更新日: 2020年6月20日 薬剤師コラム編集部

治療の向上につながる「服薬アドヒアランス」とは?

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薬物治療において最も大切なのは、処方箋に沿って適切なタイミングに適切な量の服薬を続けることです。しかし、実際はこの「服薬遵守」が守られず、患者が自己判断で服薬を中断したり、不規則な服用をしたりすることで、期待した効果が得られないケースも珍しくありません。
なぜ、服薬遵守されないのか。その要因のひとつが医療職と患者とのコミュニケーションのあり方です。これまで、服薬におけるコミュニケーションは「医療職が治療方針を指示して、患者が従う」という一方通行のものでした。しかし、何事もよく理解していないことを守るのは難しい。そこで、2001年頃から「医療職とともに患者が主体となって治療方針に関わり、その決定に従う」という双方向のコミュニケーションが重視されていきます。この考え方が「アドヒアランス(adherence)」です。
服薬アドヒアランスを維持するためには、治療方針に対する患者側の理解が必要です。
今回は、服薬アドヒアランスの実現・維持に役立つスキルや事例について、さまざまな記事をご紹介します。

服薬アドヒアランス向上のキーは「気持ちを聞くこと」

服薬アドヒアランスを実現していくうえで、傾聴スキルは不可欠です。
こちらの記事では、実際の事例を用いて、服薬指導のコミュニケーションについて解説しています。たとえば、不眠に悩んでいて睡眠薬を希望したが、唾液が出にくくなったことで、医師から「睡眠薬は出せない」と言われてしまった高血圧症の患者。薬剤師はどのように服薬指導をしたらいいのでしょうか。
ここで、「何かアドバイスをしなければ…」という思いこみは捨てましょう。もちろん、他剤併用の有無、副作用の発現の有無、血圧コントロールの状況など、必要なことを確認するのは、薬剤師として当たり前です。
そのうえで重要なのは、患者さんの気持ちに寄り添い、話をとことん聞くこと。これは、「話をうかがうことそのものが医療である」と腹をくくって、どんなに混んでいても、せめて5分程度はじっくり話を聞いてください。患者の服薬アドヒアランス向上を図るには、このような薬剤師の持つ傾聴スキルが必須と言えるでしょう。

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薬剤師として何をすれば良いのか?〜患者さんの話に耳を傾けよう〜
服薬アドヒアランスを向上させるためのポイントが傾聴。患者の感情に着目した、そのあとに薬剤師はどうするべきか、について『服薬ケア研究所』の岡村先生が解説します。

多剤併用の患者の服薬アドヒアランスを向上するには?

服薬アドヒアランスを向上させるために重要なのがポリファーマシーを防ぐこと。そもそも処方されている薬が妥当なのか考えることも薬剤師の大事な仕事のひとつです。
医師は毎日多くの外来患者に対応しており、忙しさからこれまでの処方との重複や相互作用まで気が回らずに薬を増やしてしまうこともあります。
薬剤師は、医師以外でポリファーマシーを防ぐことができる唯一の医療職です。患者が持つ服薬に対する負担感や抵抗感を除去することが、服薬アドヒアランスの向上につながります。たとえば、「処方薬が多すぎて服薬できていない」や「大量の服薬で食事が摂れていない」など医師の前ではなかなか言いにくい患者の本音も薬剤師なら聞きだすことができるかもしれません。
「杉山医師の『薬剤師に伝えたい医師のトリセツ』」では、医師がどのようなことを考えて処方しているか、薬剤師にどのような役割を臨んでいるかがわかりやすくまとめられています。
「薬剤師の情報提供で、処方薬過多に慣れきった医師の目を覚ましてほしい」という杉山先生の思いを、是非記事を通して受け取ってください。

杉山医師の『薬剤師に伝えたい医師のトリセツ』
「先生、ポリファーマシーって知ってます?」処方薬の減らし方
ポリファーマシーを防ぐことで服薬アドヒアランスを向上させる杉山医師のテクニックを紹介します。医師への提案にも活かせそうな考え方です。

認知症患者の服薬アドヒアランスを向上させるには?

服薬アドヒアランスを向上させるためのポリファーマシーに関する事例をもうひとつご紹介します。
減薬の同意を得ても忘れてしまう認知症の患者の例です。
認知症をはじめ、高血圧、脂質異常症や心房細動など多数の疾患を有する患者さん。合わせて10剤以上の薬を前医から処方されていました。担当医が変わった、訪問診療に切り替わった、入院したなど、患者さんになんらかの変化があるときは、減薬の良いタイミングです。
本人と相談し、大勢に影響はないと思われた3種類ほどの薬を中止することにしました。
ところが、数日後に患者さん本人から「薬が足りない。ちゃんと出してもらわないと困る!」との電話。その後の往診で何度か説明をしましたが、患者さんは頑として譲らず、結局は減らした薬を再度処方することになりました。
認知症の患者さんのなかには、減薬に同意したことを忘れてしまうこともあります。患者さんの性格を見極めて、どのようにコミュニケーションをとれば納得してもらえるか考えることが大切です。自分だったらどのように介入するか、是非記事を読んで考えてみてください。

Dr.竜平の服薬コンプライアンス
ポリファーマシー対策で薬剤師ができることとは
特に認知症患者の服薬アドヒアランスを向上させることは難しい点も多いですが非常に重要です。認知症患者のポリファーマシー対策によって服薬アドヒアランスを向上させましょう。

内科医が服薬アドヒアランス向上において薬剤師に期待すること

服薬アドヒアランスがなかったために起きたインシデントについてもご紹介します。
90歳近い女性患者さんで、前医からの処方は降圧薬、痛み止め、胃薬、眠剤など7種類。こちらの処方は継続し、薬剤数が多いため一包化処方しました。
1週間ほど経ったところで「薬を飲んだら倦怠感が出て困っている」との電話。来院時に話を聞くと痛み止めで胃部不快感が出ている可能性があり、痛み止めを中止することにしました。
それから4日後、「倦怠感が出た」と再び来院。診察すると、なんと収縮期血圧が通常110〜120mmHg程度の方が190mmHg近くに上昇しているのです。
よくよく話をうかがうと、痛み止めだけでなく降圧薬も一緒に飲むのをやめてしまっていたとのこと。一包化したために、痛み止めがどれか分からず、全部飲むのをやめてしまったそうです。
薬剤師がどのような介入をしていたら、今回のような事態は防げたでしょうか。「医師が見落としている点がどこかにないだろうか?」という疑念を持つ薬剤師のサポートが不可欠と言えるでしょう。

Dr.竜平の服薬コンプライアンス
医師が意識しにくい、一包化の落とし穴
患者にとっては1回分の服薬量が分かりやすく便利な一包化ですが、一包化したがゆえに、服薬アドヒアランスが下がってしまった事例を紹介します。
まとめ

服薬アドヒアランスの向上に重要なスキル、アドヒアランスがなかったために起きたインシデント、その改善として薬剤師に求められることについて記事をご紹介してきました。
アドヒアランスを浸透させることは、患者の自己判断による服薬の中断や無断服薬、不規則な服用が行われる確率を減らし、治療の向上につながります。また、ポリファーマシーの抑制や残薬を生まないことは、昨今の医療費の増大にも効果があります。
是非、これらの記事を読んで医師からも患者さんからも頼りにされる薬剤師を目指してください。

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