疑義紹介とは?薬歴の書き方やコミュニケーションの取り方について解説
疑義照会とは、応需した処方箋の内容に対して、薬剤師が疑問や不明点を感じた場合に、医師へ確認する業務のこと。疑義照会は薬剤師法24条に定められた重要な薬剤師の仕事です。
「薬剤師は、処方せん中に疑わしい点があるときは、その処方せんを交付した医師、歯科医師又は獣医師に問い合わせて、その疑わしい点を確かめた後でなければ、これによって調剤してはならない。」(薬剤師法より抜粋)
疑義照会は、タイミングや伝え方を間違えると処方元の医療機関とトラブルになる恐れがあり、苦手としている薬剤師も少なくありません。しかし、疑義を明らかにしないまま処方してしまうと、治療効果が下がるだけでなく、副作用や有害事象を引き起こしてしまう危険があります。
疑義照会のポイントは大きく2つ。「薬学知識のアップデート」と「コミュニケーションスキルの向上」です。それぞれのポイントについて記事で詳しく見てみましょう。
医師にとって「疑義照会」は迷惑?
「疑義照会をすると、医師に嫌がられる」と感じている薬剤師は少なくないですが、実際のところ、医師は疑義照会をどう受け止めているのでしょうか。
医師100人に疑義照会や薬剤師との関わり方についてアンケートを取りました。その結果、「薬剤師からの疑義照会でストレスを感じたことがありますか?」という質問に対して、およそ70%の医師が「ない」と回答。疑義照会にネガティブな印象をもっている医師は少数派と言えそうです。
初めて連絡する医師が相手でも、尻込みせずに疑義照会すれば、きっと医師は応えてくれるはずです。
なお、疑義照会に対して「ストレスを感じたことがある」と回答した医師のなかで、最も回答が多かったのは「不要な確認事項が多い」。その次が、22.4%の「タイミング」でした。できるかぎり不要な疑義照会をせずに済むよう、日々知識をアップデートしていくことが大切です。
また、医療機関が忙しいタイミングを把握し、その時間帯は避けることも、円滑にコミュニケーションをとるうえで重要でしょう。
医師が処方薬を決めるプロセス
疑義照会をする際に「どうしてこの薬を選んだのだろう?」と医師の処方意図に疑問を持った経験はありませんか。処方意図を知ることは、疑義照会で「不要な確認」を減らすことにもつながります。医師はどのようなプロセスで薬を選択しているのか解説した記事をご紹介します。
クリニックの副院長として働く内科医のDr.竜平の事例では、まずガイドラインや論文を参考に、疾患に対して作用機序を踏まえ薬を決定しています。その次に、患者の認知機能や年齢、身体機能、介護者の有無や経済状況などを考慮し、状況に適した処方を選択しているそうです。
とはいえ、外来では忙しいことが多く、「病状が落ち着いている患者さんに、深く考えずに繰り返しで処方をしてしまうときもゼロではない」とDr竜平は話します。
また残念ながら、知識がアップデートされず昔ながらの処方を続ける先生、患者状況をなにも考えずに杓子定規に処方する先生などがいるのも事実です。
そのため、処方意図がわからない時はためらわず疑義照会することが重要です。患者さんを服薬による有害事象から守る最後の砦として、積極的に医師とコミュニケーションをとっていきましょう。
疑義照会時のコミュニケーションのコツ
疑義照会のポイントであるコミュニケーションスキル。そのスキルはどのように向上させると良いのでしょうか。コミュニケーションスキルが低いため、自信を持って医師に疑義照会をできないという薬剤師は少なくありません。そんな人は、下記の記事を読んで、疑義照会の不安を解消しましょう。
「ドクターのミスをどのように伝えるべきか」「どうすれば、疑義の意図を簡潔に伝えられるか」「自分の知識不足で自信がないときの対処法」など、疑義照会でよくある薬剤師の悩みに対して、薬剤師かつ医療接遇コミュニケーションコンサルタントの村尾先生が回答します。
「自分の知識や自信の有無とは関係なく、目の前の患者さんの役に立つために何ができるか考え、実行すること」こそが薬剤師の使命と村尾先生は話します。
経験の浅い薬剤師にとって、疑義照会は怖いもの。また、知識を豊富に身に付けたとしても、疑義照会で思っていることを医師に100%伝えるのは至難の技です。自信をつけるには、知識だけでなく「当たって砕けろ」の度胸も必要です。それぞれのケーススタディを参考にして是非、失敗を恐れずに挑戦していってください。
疑義照会をした時の薬歴の書き方
疑義照会をした際、薬歴の書き方に不安はありませんか。疑義照会で重要なコミュニケーションは「口頭」だけでなく、「文書」=薬歴でも重要です。
「疑義照会はこのように書く」というフォーマットがあるわけではありません。ケースごとに「どのようにプロブレムを捉えたのか」をよく考え、判断していきましょう。
たとえば、降圧薬の服薬に不安があり、疑義照会で処方内容が変わった患者さん。対応した薬剤師が次のような薬歴を書いていました。先生ならどのようなSOAPを書きますか。ぜひ記事のお手本と比較してみてください。
(S) しばらく血圧の薬を飲まなくて良かったけど、また上がってきた。160/70~80くらい。いつも7時と21時に測ってます。今回の処方は前と同じ薬ですか?以前飲んだとき、急に血圧が下がって動悸がしたことがあるから優しいのが良いんだけど。
(O)併用薬無し。副作用歴無し。今回は前と同じ薬の処方。
患者さんはできるだけ薬は飲まない主義で、仕方なく昨年から血圧の薬だけ飲み始めたとのこと。
(A)疑義照会で患者さんの希望を伝え、アムロジピンの2.5mgを医師に提案してみたところ、OKとのこと。
(P)半分の量になりました。これで様子を見て下さい。ほてり、めまいなどに気を付けて。
疑義照会は多くの薬剤師がつまずくポイントであり、苦手としている人も少なくありません。しかし、先のアンケートで紹介した通り、7割の医師が「薬剤師からの疑義照会に不満やストレスを感じたことはない」と回答しています。また、医師がストレスを感じる理由としては、「薬剤師の知識不足」と「タイミング」が挙げられていました。知識不足は、薬学知識のアップデートで、タイミングは、相手の状況を察したコミュニケーションで解決できます。
疑義照会は、医薬分業の根っこともいえる、薬剤師として欠かせない業務です。薬剤師と医師が、それぞれ専門家として対等な立場でコミュニケーションをとることが、患者さんの利益につながります。
今回ご紹介した記事を参考にして、「薬学知識のアップデート」「コミュニケーションスキルの向上」を意識し、日々の疑義照会に取り組んでください。